大曽根家の朝の作品情報・感想・評価

「大曽根家の朝」に投稿された感想・評価

これまでの軍国主義の時代を代表するようなプロパガンダシーンが垣間見える作品から一転して、ある自由主義者のブルジョワ一家の戦争による喪失と再生までを描く今作。
冒頭のクリスマスパーティーのシーンが『素晴らしき哉、人生!』のフィナーレのような美しさ、こんな幸せな攻撃から下り坂のような戦争へと突き進む時代への木下なりの恨み節のようなものすら感じられる。
しかしこれまでのプロパガンダシーンを入れつつも前作『陸軍』のラストシーンのようにところどころに戦争に対するアンチテーゼを盛り込んできたなかで、今作のようにストレート過ぎる表現はこれまでの溜まってきた鬱憤を晴らすつもりなのか、逆にGHQの影響でそうした作風が好まれたのかななどとどちらにでも取れるのは時代ゆえだろうか。
独り言

独り言の感想・評価

2.0

このレビューはネタバレを含みます

木下惠介戦後作。

憤懣溜まってたんだろうなぁ!まあ登場人物たちのよく喋ること。
わが恋せし乙女が表現の開放だとしたら、こちらは思想の開放といったところ。
珍しく本当にどこまでも嫌な人物(軍国主義の擬人化)がでてくる。
国策映画を撮っていた人だからとんでもなく掌返しなんだけれども、陸軍でハッキリと反戦を掲げていた木下惠介だからこそ、素直に受け止められる。

怒りと悲しみと喜び、木下惠介が見てきた戦争を全部感じることができる。

順番に見ているので、戦後この先どんな作品を作るのか楽しみだ。
ラストシーンで晴ればれと昇ったにっぽんの朝日は70年経ってなんとまた沈みかかってて、もし木下恵介がこの循環について描いたらどんな傑作が生まれたろう、いやそれまさに彼ら(小津溝口成瀬黒澤木下)がやってたことだったか?あゝやっぱ沈むのかな、で今その事をしっかり描ける映画人っているの?あ、塚本晋也!…とか思った。
敗戦直後1946年の作品。裕福な大曽根家は亡き父は自由主義。母は横浜の貿易商の娘で外国の学校(フェリスかな)を出た意識高い系。長男は戦争批判して特高に捕まり次男は画家の卵。三男は無邪気にお国を信じる学生。長女裕子は婚約者がいるが、クリスマスに出征。そこへ今でいう老害の内地勤務大佐の亡き父の弟がやってきて特高に捕まった息子を出すなど恥さらしであると娘の縁談を辞退する。以後叔父は大曽根家に入り込み「大日本帝国代表」の扱いとなり対する母娘は「戦後の新しい常識人代表」となる。
杉村春子の悲しみ、怒り、絶望、全てがこの映画を引っ張り、戦争への国民全体の怒りを代弁している。私は確かに軍事政権は悪いがそこまで追い込まれた戦前のアジアの情勢も考えたいと思う。もし戦争しなかったら日本はアジアの玄関マット化していたことだろう。
この映画で1番美しいのは冒頭のクリスマス。出征する婚約者はショパンの「別れの歌」をピアノ演奏し、悲しみにたまらず台所へ逃げる先にはやかんが待っている。やかんのお湯が沸きお茶を飲んだら彼は旅立ってしまう、切なさが一挙一動に現れる。
yuria

yuriaの感想・評価

3.8
木下恵介監督作。杉村春子の顔のアップ、これだけで映画がつくられていた。当時のいわゆる暴露映画であり、戦後日本映画として必見の作品。