エイデン

コワイ女のエイデンのレビュー・感想・評価

コワイ女(2006年製作の映画)
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『カタカタ』
ある夜 OLの加奈子は、恋人の晃に車で家に送ってもらっていた
やがて車を停めると、加奈子は晃からプレゼントを贈られる
そこへ晃の携帯に着信があるも、彼は出ることなくそれを切ってしまう
それは別居中の元妻で、晃は間もなく加奈子と籍を入れるつもりでいたため、再三の連絡も無視し続けていたのだ
そんな彼に加奈子は、一度自分のことも含めて元妻に話しておくべきと諭すのだった
それを聞きばつが悪くなったのか、晃は話題を変えるようにプレゼントを開けてみるよう加奈子に促す
中に入っていたのは真珠のイヤリングで、加奈子は喜びながら晃と別れ1人帰路に着くのだった
しかしその途中 加奈子は足元に花の枯れた花瓶が転がってきたことに気が付く
更に「カタカタ」という不可思議な音を耳にした加奈子は、隣に建っているマンションを見上げるが音の正体はわからない
その時 何かが近くに落ちてきたため、加奈子がそれを拾い上げると、錆が目立ち汚れが目立つものの先程プレゼントされたのと同じイヤリングだと気付く
不思議に思い頭上を見上げた瞬間、加奈子は凄まじい衝撃に見舞われて倒れてしまう
少し頭を切った程度で大事には至らなかったものの、それから加奈子に恐ろしい恐怖が訪れていく

『鋼 -はがね-』
人気の無い夜の道を歩いていた青年 関口は、上半身にずだ袋を被った妙な人物と出会う
その人物は急に走り出して関口に体当たりすると、どこかへと走り去っていくのだった
翌日 仕事先である自動車整備工場での勤務を終えた関口は、気難しい社長の高橋に呼び止められる
妙な面持ちでビールを勧める高橋は、唐突に明日 妹とデートをしてほしいと関口に頼み込む
デートには客が預けていた高級車を使ってもいいと高橋は言い、強引に自宅の住所を書いたメモを関口に押し付ける
元来 気弱で口下手な関口は断りきれなかったが、写真に映った高橋の妹はかなりの美人で、いつしか乗り気になっていた
翌日になり、関口は約束通り高級車に乗って高橋の家を訪れる
関口を出迎えた高橋は、熱心に手押しポンプを使って、何かの液体を上半身にずだ袋を被った人物に送り続けていた
高橋によれば、そのずだ袋を被った人物こそ妹の“鋼”だと言う
鋼は口も効かず、不快な機械音のようなものを出しながら、一心に何もセットされていないミシンを踏み続けていた
やがて出かける準備を始めた鋼を待つ間、関口は昨日の写真を見せながら遠回しに高橋に抗議するが、彼はこれが鋼だと言って聞く耳を持たない
それどころか、鋼に何かあったらぶっ殺すとまで言われてしまい、関口は何も返すことができなかった
しばらくして、鋼はずだ袋を被ったままミニスカートにハイヒールという出立ちで関口の前に現れる
混乱するままデートをする羽目になった関口は、もはや人かどうかもわからない鋼に翻弄されていく

『うけつぐもの』
冴子と道夫の母子は、離婚によって東京から田舎の実家へと移り住むことになる
病床の老いた母 敏江は早く東京へ帰れと厳しい言葉を投げかけるも、冴子はここで職を探し、母の面倒を見るつもりでいた
その日の夜 目が覚めてしまった道夫は、トイレに行く途中 庭に少年が立っているのを目撃
その少年は今に飾ってある遺影の少年と同じだと考えた道夫は、冴子に少年のことを尋ねる
冴子によればその少年は正彦と言い、7つの時に行方不明になった自分の兄で、道夫の伯父に当たるのだと言う
道夫は正彦と庭で会ったと訴えるも、冴子はそれを祖母に話してはいけないと受け流してしまうのだった
それからしばらくして、冴子は敏江の介護をしているヘルパーで幼馴染でもある梶と再会
その頃 敏江が部屋を覗きにきていた道夫に飴玉をやっていると、道夫は敏江の若き日の写真を見つける
それを見た道夫は、「お母さんもお婆ちゃんみたいになっちゃうの?」と尋ね、逃げるように部屋を出て行く
入れ違いに部屋に梶が現れるが、敏江は憎々しげな表情で「同じことが起こる」と呟くのだった
一方 冴子は離れにある蔵の鍵が外れていることに気が付き、道夫が入ったのではないかと考え、中へと足を踏み入れる
物音を聞きつけて2階へ上がった冴子は、そこで厳重に箱の中に入れられた掛け軸を発見し、呆然とそれを見つめるのだった
その日以来、冴子の様子が一変し・・・



雨宮慶太、鈴木卓爾、豊島圭介ら3人の監督がそれぞれコワイ女を題材に作り上げた作品によるオムニバス・ホラー作品

何となくヒトコワっぽいタイトルだけど、いずれも怪異や幽霊系統
そういうコワイ女の魅力をぶつけて来た作品群になってる
それぞれの関連は無いので、サクッと楽しめるのも良い

『カタカタ』に関しては、監督が雨宮慶太なので某魔界騎士とかと戦っても良さそうな特撮怪人っぽいコワイ女が登場
執拗に主人公を追い、だんだんと人外っぷりを発揮していくのは『ジーパーズ・クリーパーズ』みたいにホラージャンルがスイッチしていくようで面白かった
また異世界に迷い込んだような不条理展開が楽しく、ちょっとしたどんでん返しものにもなってる
物足りなさもあるけど短編としては上出来

2作目の『鋼 -はがね-』は、一部で謎に人気になってるホラー・コメディのような作品
上半身にずた袋、下半身はミニスカに艶かしい生足という奇妙すぎるヒロイン鋼ちゃんが不気味ながらめちゃめちゃ可愛い
得体が知れないのにどこか愛嬌があり、でもやはり人間では無い何かなのだというそこ知れぬ恐ろしさを併せ持つ、まさに怖さと魅力を兼ね備えたコワイ女のタイトルらしいキャラクターになってる
すげえ好き
その強烈な魅力はあるものの、内容としては割と薄めなキャラものの作品
一応 主演は柄本佑で、鋼ちゃんの兄役が香川照之という、少ないキャストをしっかり固めている感はあって、鋼ちゃんにも負けじとキャラを立ててはいるけど、今回は相手が悪いってくらい鋼ちゃんに持っていかれる
ちなみに公式もキャラの良さを認知してるらしく、公開当時は鋼ちゃんの日常を描く携帯用ショートムービー『鋼ちゃん』も全10話公開された
こちらは本編とは趣もかなり異なっている(というかホラー要素がどこか行った)ものの、井口昇監督、特殊効果 西村喜廣という、インディーズ邦画好きにはお馴染みな製作陣が手堅く?作ってるので観てほしい(DVD特典に収録されてる)

3作目の『うけつぐもの』は、古民家を舞台にしたおどろおどろしい雰囲気のホラー
清水崇が監修してる
終始 不気味な閉塞感の中で、徐々に変貌していく母 冴子
身近な誰かが底知れぬ何かに変わっていく様子は、『シャイニング』に代表されるような悪夢的恐怖を感じさせる
一家に受け継がれていく恐怖は全貌こそ明らかにならないものの、嫌な臭わせでまとめ上げていくのは、人によってはクるものも多いと思う
先の2作に比べるとインパクトこそ薄いものの、王道的な満足感を与えてくれる満足させてくれる手堅いホラー作品といった印象が強い

そんな感じで、異なるジャンル、異なるベクトルからコワイ女を魅せてくれる作品
それぞれ好みはあれど楽しめる内容にはなってるので気軽に観てほしい作品
個人的には恐ろしさという女性の魅力には弱いタイプなので好き
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