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ロルナの祈りの白のレビュー・感想・評価

ロルナの祈り(2008年製作の映画)
5.0
グローバリゼーションによって均質化される世界の中では、これまで人々が共有してきた大きな物語の基盤となる歴史や伝統が失われる。加えて、グローバリズムが生み出す共通性は求心力のない単なる人間の集合体を作るだけで、失われた物語に代わって人と人を結び付けるものを何も生み出していない。
だから人々は目に見えないもので繋がるしかない。そんな現代に於いて、人と人とが見えないものによって繋がるための神話が今こそ意味を持ち始め、必要とされているがために世界は再神話化している。
今作では皆凍った心を持っている。しかし次第にそれは愛の刹那に溶け合い、世界は同じ時間で違った色に見えだす。ロルナは架空の子を抱き、ベートーヴェンのピアノソナタはロルナの健やかな祈りを、脈略と受け継がれるべき愛の神秘を讚美する。そうした人間性が通奏低音として遍く世界をダルデンヌは希望の下で照らし映し出そうとする。
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