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ラスト・ソングのodyssのレビュー・感想・評価

ラスト・ソング(2010年製作の映画)
3.0
【オバサン声のヒロイン】

(以下は13年近く前、ロードショウ鑑賞直後に某映画サイトに投稿したレビューです。某サイトは現在は消滅していますので、ここでしか読めません。13年前の感想であることを考慮の上でお読み下さい。)

アメリカ最新の青春映画。ヒロインを演じるマイリー・サイラスは1992年生まれ、私はこの映画で初めて見たのですが、アメリカでは主演のテレビドラマが大ヒットしてティーン・アイドルになっているとか。

容姿的にはまあ可愛いなとは思いますが、声に魅力がないのが難点。愛想も色気もないオバサン声で、女声は低音でもそれなりにチャーミングな場合があるものですけれど、そういう声でもありません。最初のあたりはかなり拗ねているという設定で登場するのでそのせいかと思ったのですが、後半に行っても声には変化がなく、私だったらこういう声の女の子とは付き合いたくないな、と感じました。

また、あくまでこの映画の中で演じている役でということですが、ヒロインはちょっと性格的に問題があるのでは。大学に進む前の女の子が色々未熟な面があったり、悩んでいるせいで親切な人につらく当たってしまったりといったことはあるでしょうけど、それにしても父親や恋人に対する態度があまりにナッテナイと言いたくなる。

深刻な描写を避け、スムースな筋の流れを重視した脚本のせいでしょうが、未熟なりに魅力的なヒロイン像を作ることはできるはずで、どうもそういうところで足りない気がするのです。この映画ではヒロインだけが未熟なのであって、父親や恋人はもとより、彼女よりはるかに年下の弟ですら彼女よりも大人なのです。或いは、今どきのアメリカの平均的な女の子はこのくらいワガママでも許される存在になっているということなのかも知れませんが。

脚本の練りが足りないのは、ヒロインの進路についても言えます。色々葛藤があって幼少時から目指していた進路を断念しているという設定ですけれど、その葛藤がよく見えてこないのです。また、その断念を翻すにいたる経緯もちょっと安易な印象です。本来、進路は自分自身の問題であり、自分の内部に納得できるものがあるかどうかで決まるはずで、この映画のヒロインがどうも外在的な理由で進路を選んでいるように見えるところが、作品を浅いものにしているのではないでしょうか。

舞台となっている自然環境がちょっと面白い。ヒロインは砂浜に埋められた海亀の卵を食べているアライグマを追い払って海亀を守ろうとします。海亀の味方なのはいいけど、アライグマにしてみれば海亀の卵を食べるのは自分なりの自然の摂理なんですよね。海亀の赤ちゃんが孵化して海に走っていくシーンも出てくるので、どうしても海亀=正義?みたいな設定なんだけど、これでいいんだろうかと私は軽く悩んでしまいました。

恋人が王子様である(その意味は、映画を見れば分かります)、というのがちょっと笑えました。やっぱり女の子を迎えに来るのは白馬の王子様、なんですね。また、ヒロインは一応容姿的には可愛いけれど、王子様が以前につきあっていたという設定の女の子アシュレイを演じるMelissa Ordwayのほうが正統的な美女で、私だったらこっちを選ぶけどなあ、なんて思っちゃいました。まあ、今どきは正統的美女がヒロインになれない時代なんでしょうね。

色々書きましたが、青春映画としていちおう楽しめる程度には作られているので、かろうじて合格ということでこの点数。
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