K

ボウリング・フォー・コロンバインのKのレビュー・感想・評価

4.1
1999年に起きたコロンバイン高校銃乱射事件を題材に、他の国に比べてダントツに多いアメリカの銃犯罪の根本原因、アメリカの銃社会の矛盾を浮き彫りにするドキュメンタリー映画。

スーパーマーケットで合法的に購入された銃によって怒ったコロンバイン高校銃乱射事件、そして数えきれないほどのアメリカでの銃犯罪。

「銃所持に対する規制の甘さ」ではなく、アメリカ経済を支える“恐怖と消費の一大キャンペーン”、社会的弱者を見捨てるゆがんだ社会構造、国をあげて行っている海外での戦争行為、政治と金など、アメリカ社会の抱える問題が抉り出される。

コロンバイン事件の犯人がマリリン・マンソンを信奉していたことで、彼がこの事件
に影響を与えたと報道されたらしいが、マンソンは「なぜ俺が攻撃されるのかわかるよ。俺を犯人にすれば簡単だからだ。」と答えた。インタビューで語られた言葉がこの映画に出てくる大人たちの中で最も洗練されていて至極真っ当であることはなんとも皮肉。

理由のわからない事件が起こり不安になった時に、「こいつら」が悪いんだと是が非でも何かのせいにする帰属処理で、そしてこの「こいつら」は普通の生活を送っている僕達とは違うんだと、自分とは無関係な地平に押し込めて安心する切断操作。巧みな情報操作によって、アメリカ社会が抱える本当の問題から我々は目を背けさせられていると改めて気づく。
K

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