半兵衛

行き止まりの挽歌 ブレイクアウトの半兵衛のレビュー・感想・評価

3.5
藤竜也が暴力など違反行為上等のアウトロー刑事を生き生きと演じるアクション映画の佳作。日活ニューアクションを経てテレビドラマのアクションもので活躍してきた藤の集大成ともいえる一作で、藤の鍛え上げられたマッチョな肉体が説得力をもたせている。そして50近いのにノースタントでバイクに引きずられたり吹き飛ばされたりする役者魂に感服。

そしてテレビドラマが主戦場になっていた村川透監督にとって数年ぶりの映画、しかも古巣の日活撮影所&主役が助監督時代から知る藤で撮影ということで気合いの入った作りになっている。

話の作りは大雑把でどちらかと勢い重視という作風なのだが、それがフットワークの軽さを心情とする村川透監督の演出とマッチしてスピーディーな語り口となって見ている人に心地よさをもたらす。アクションも多過ぎて胃にもたれるところはあるが、ガンアクションのみならずカンフーやナイフ、バイクなど多彩に揃えているので見ていて飽きない。そして村川監督のお得意とする走るシーンも健在で画面を引き締める。

物語も妻のため自分を裏切った村上に対し何もいわず許す藤竜也、成田三樹夫と藤の関係など男にとってグッとくるシーンが随所に出てくるのが堪らない。

あとスタイリッシュなカメラワークも村川演出とマッチしていて最高、一見すると単なる長回しだが実は映画の重要なアイテムをちゃんと映してお客さんにさりげなく説明するという高等なテクニックをやっているのが凄い。

藤とコンビを組む最初は暴走する彼に呆れるも徐々に尊敬の念を抱く若手刑事の村上弘明やボクっ子娘の不良少女いしのようこなどメインキャラも充実しているが、それ以上に日活で活躍した名脇役や村川監督と馴染みのある役者たちが脇で賑やかしくしているのが楽しい。『探偵物語』のその後のような榎木兵衛や珍しく悪役ではない草薙幸二郎、殴られっぷりが良い同僚刑事の石橋蓮司、強面の刑事で特に台詞はないけど存在感のある山西道広など。そして時にはコミカルに、時にはシリアスに場面を引き締める藤の同期で上司でもある成田三樹夫の名バイブレイヤーぶりに痺れる、ただこの二年後にこの世からいなくなったことを思うと切なくなるが。

ちなみに藤と村上の関係が『孤狼の血』と被る気がするのだが偶然か?
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