けーはち

暴力脱獄のけーはちのレビュー・感想・評価

暴力脱獄(1967年製作の映画)
3.3
本作に何故B級ヤクザものみたいな邦題をつけたのか。邦題に反して暴力的ではないが不服従のクールガイ、その目線は那辺にありや。理由なき脱獄と反抗の末に倒れ、事実以上の伝説を残す様子はまるでイエス・キリストの早すぎたニューシネマ。ある種の文学性と、殴られても折れないガッツ、仲間を鼓舞して刑務作業を凄いスピードで終わらせる先導力・明るさ、卵50個を食い切る奇跡(?)で次第に彼のカリスマが高まっていく獄中の人間ドラマ、そして田舎の牧歌的な刑務風景には人里離れた不思議でメルヘンチックな空間の寓話性もある。何であんなとこで美女が泡まみれになりながら洗車してるんだよ、とツッコミたくなる変な俗っぽさのなかに宗教的な意匠を散りばめる不条理な雰囲気映画。劇伴はジャズとオケとブルーグラスを合わせたような一風変わったスコアでバンジョーやアコギ、ハーモニカといった楽器がアメリカの片田舎の風景に見事にマッチ。