離れの部屋に無断で寝泊まりしていた15歳の少女セリーヌが、その家の主である夫婦の庇護を受けるようになるが、実はそこにはセリーヌのある計画が潜んでいた。善と悪が共存するような少女セリーヌのしたたかさと、彼女によって夫婦が崩壊していく姿を描いた、オリヴィエ・クスマック監督のデビュー作となるサスペンスドラマ映画。

TVドラマのような安っぽさは否めないが、サスペンスとしてなかなかの出来。最初のほうは若い男女が裁判官の男性を美人局にはめて裁判官夫婦をどん底に突き落とすという映画かと思っていたが、かなり異なる展開だった。でも、タイトル（特に英題）からわかるように、アナイス・ドゥムースティエ演じるセリーヌが夫婦を騙して崩壊させるという点は同じ。一方で、彼女に対する夫婦の異なる態度が途中で急に逆になるという展開が説得力に乏しい。もう少し脚本上の工夫が必要だったのではないだろうか。

この映画の魅力は、アナイス・ドゥムースティエにあると言って言い過ぎではない。彼女はもともとこういう役柄を演じるのが上手いということもあるが、オリヴィエ・クスマック監督が意図した、本質的に善人なのか悪人なのかがわからないような、ある意味で神秘的なキャラであるセリーヌを説得的に演じている。そして、彼女のコケティッシュな魅力には、パスカル・グレゴリー同様、ノックアウトされる。（私のように）彼女のファンであれば、ぜひ見ておきたい作品だろう。

（カナダ滞在中に、Tubiで鑑賞）