身の回りの全てをギャンブルに変えてしまう男が町のドンの様な男の所有物に成り下がっていた娘を勝負に勝って結果的に解放してやる話って事でいいのかしら。山道のロングショット。

2025.6.28鑑賞。

　ボーゼージの最初期の監督作（ウィキペディアには監督デビュー作のような記述もあるが、フィルモグラフィーによると本作の２年前に１本監督しているようなので、２本目だと思う）。自身が主演も務める３巻物の西部劇だ。勿論、プロット構成はかなり性急だし、普通の感覚だと受容し難いご都合主義もあるが、意外な見せ方が面白さに繋がっている部分もある。いやそれ以上に、人物の配置やカッティングが既に映画らしさに溢れており、実に楽しい作品だ。

　主要人物は４人。まず最初にその内の３人が、ワンカットずつ役名と俳優名入りで紹介される。皆、黒枠の中にウエストショット以上に寄ったショット。若いカウボーイのロッキーがボーゼージ、次に酒場のギャンブラーのようなケンタック－ジャック・リチャードソン、そして、ケンタックの情婦－酒場で呆然と宙を見つめるナン－ヘレネ・ロッソンのショット。皆雰囲気のある良いショットだ。この３人のシーンが少し挿入された後で、もう一人の酒場女でケンタックに横恋慕するケイト－リゼット・ソーンが繋がれる。

　ロッキーは日常生活の見るもの全てを賭けにしてしまう男。最初に友人と２人で、大きな袋（ドンゴロス）を持って歩く男が袋を落とすか落とさないかで賭ける。こゝで、袋の男がミタメのように挿入され、次に賭けをする２人を繋いだ処理は、明確な切り返しだ。あるいは、酒場のテーブルにいるケンタックの背後にケイトがくっついて座った後、ナンがその後ろから近づくのを、ポン引きのようにカットを割って見せるカッティングにも驚きがある。このような同一空間のカット割りだと、酒場でナンとケイトが対峙する場面での、２人のツーショットから、酒場を引いて見せたマスターショットレベルに繋ぐといった編集も目を引く。こゝは、キャットファイトでも始まるかと予想させて、女２人を抱擁させるという演出に持っていくのが意外性があっていいと思う。他にも、ロッキーがナンを拉致した（というか半ばナンが進んでついて行った）後、２人が野営する場面で、焚火の光の中、拳銃２丁をロッキーがナンに預ける演出があるが、こゝも、ポン寄りとポン引きみたいな編集がある。

　さらに、終盤のロッキーとケンタックの決闘前に挿入される、山道を乗馬が走る大俯瞰ショットの連打にも瞠目するし、ラスト近くに全編でワンカットだけ、クローズアップがある（ナンの手が大写しになる）という趣向もよく考えられた（意識された）ものだろう。序盤からほゞ全編に亘って延々と２つの場面をクロスカッティングで繋ぐ構成も含めて、まるでグリフィスの映画みたいと思う。あと、このラストでは、フラッシュフォワードみたいな（単なる願望あるいは空想なのかも知れない）将来イメージが短く挿入されるということも書き留めておきたい。