Jeffrey

心のともしびのJeffreyのレビュー・感想・評価

心のともしび(1954年製作の映画)
4.0
「心のともしび」

冒頭、風光明媚で済勝な湖。モーターボート事故が起こる。金持ちの男と医者の男、事故による盲目の女性、人工呼吸器、持病の発作、自責の念、入院先、絶望の淵。今、アロウヘッドの湖畔を眺めながらメロドラマが展開する…本作はダグラス・サークが1954年に制作、監督した傑作で、既にクライテリオンからBDも発売されていたが、ようやく国内でも初BD化されボックスを購入して再鑑賞したが傑作の一言。1935年にも「愛と光」として映画化されていた様だが、こちらは未見である。アイリーン・ダンとロバート・テイラーが主演で、ロイド・C・ダグラスの小説の再映画化が本作で、ジェーン・ワイマン(本作で彼女はアカデミー賞主演女優賞ノミネートされている)とロック・ハドソンが主演した。やはりこの監督のテクにニカラーで描かれる恋愛ドラマは完璧だわ。この世界観が色の香水で照らし出されるのが半端ない。

色彩豊かな甘美な映像がとても見心地が良くかつ詩情と美の頂点ともいえるサーク流メロドラマが確立されており文句のつけどころがない。今思えばユニバーサルインターナショナル時代に監督した彼の傑作にして興行的にも成功した「悲しみは空の彼方に」とコロンビアピクチャーズから移籍後にロス・ハンターと初めて組んだ本作を含めて彼はこの間11本映画を監督するがうち6本はハンターのプロデュースであることに気づく。そういえばハンターに本作の提案をしたのは主演のワンマンだったらしい。それと私のALL TIME BESTに君臨し続ける最高傑作ムルナウ監督の「サンライズ」を撮影したアロウヘッド湖でロケーション撮影した美しい湖畔の映像には息を飲む。

さて、物語は大金持ちのボブは湖でモーターボートの事故を起こすが、近所のフィリップス医師の自宅から借りた人工呼吸器のおかげで九死に一生を得る。だが、人工呼吸器を貸し出したためにフィリップス医師は持病の発作で亡くなってしまう。 入院先の病院から抜け出したボブは偶然フィリップス医師の妻ヘレンと出会い、 フィリップス医師の死が自分のせいであることを知る。 自責の念にかられたボブは何とか和解したいとヘレンに迫るが、そのためにヘレンは事故に遭い、失明してしまう。やがて、彼女の失明は治らないことを告げられ絶望の淵に立たされてしまう…と簡単に説明するとこんな感じで、ハッピーエンドが好きではない方にとっては辛いのかもしれないが、この作品は結論から言うと神の巡り合わせなのか、奇跡的に失明が回復すると言うオチで大団円を迎える。そして「天が許し合うすべて」のクライマックスと同時に窓から見える風景が重なる。

そしてメロドラマに託すアメリカ社会に対する批判的な視線をとことんを貫き描いた本作はメロドラマ世界を誕生させ、定義を変えたと言える愛すべき1本だ。とにもかくにも豪華なテクニカラーが圧倒されてしまう。基本的には牧師が説教したり、すれ違いだったり奇跡的な救済から盲目の辛さ、偶然が織り成す通俗的なプロットが本作の典型的なドラマスタイルになっている。それと音楽が素晴らしく、情感溢れるフランク・スキナーの心優しい音色に慟哭する。そして色彩世界、監督のこだわり抜かれた空間的描写が余韻を残す。いゃ〜、出だしの湖モーターボートのシーンから魅了される。

始まってからすぐに悲劇のメロドラマが始まり、色彩豊かな自然と家々の描写、女性が運転するオープンカーなどを監督の美的構図が発揮されていて最高。特に湖の別荘のような敷地のショットの数々は息を飲む美しさ。しかも事故を起こしてしまい、病院に入院することになった場面での病室内までお洒落な色彩美で構想されていてびっくりする。それにやはり女性のファッションがパステルカラーを強調し、フレーム内に映り込むすべてのものととマッチし芸術性を光らせている。それとミニマムな最低限のものしかお置かない完璧主義者が随所に映像から見てとれる。そしてサークのラストはいつも絵画のように美しい窓からの外の風景が写し出される。
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