MasaichiYaguchi

臨場 劇場版のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

臨場 劇場版(2012年製作の映画)
2.6
何だろう、この胸焼けみたいなモヤモヤ感やムカムカ感は。
「本当」の最後のシーンで痛感したのだが、この映画の製作陣は、テレビドラマの延長線上、2時間スペシャルの感覚で作っているような気がする。
だから、本作の要である「真犯人」の動機や、主人公の度の過ぎた横紙破りで、作品にリアリティが感じられなかった。
映画冒頭で描かれる衝撃の事件はリアルで、現実に起こっているので逆に神経を逆撫でさせる。
この冒頭の事件に絡めて描かれる「刑法第39条」と云うテーマ。
この刑法をテーマに、どう社会派的なストーリーが展開するのか期待していたのだが、上滑りするばかりで、心に響いてこない。
本作の「刑法第39条」に拘る悪い人物達が、如何にもステレオタイプ過ぎて、安いドラマを観ている様な気分になる。
また、これら悪い奴等を断罪する犯人の動機が、どう考えても「こじつけ」で、あの立場の人間が、そう簡単にダークサイドに陥るだろうか?
そして、最大のリアリティ無さの原因は、警察組織というガチガチの縦社会において、いくら優秀な「一匹狼」とはいえ、主人公の度重なる独断専行は罷り通らないのでないだろうか?
はっきり言って、本来なら映画の前半で、主人公は停職になっていると思う。
一体、この映画は我々に何を言いたいんだろう?
「刑法第39条」をテーマに救いの無いストーリーを展開させ、「正義」とか、「許し」とか、「受容」とか、幾らでも描きようはあると思うのだが、何も胸に響いてこない。