デヒ

スリ(掏摸)のデヒのレビュー・感想・評価

スリ(掏摸)(1959年製作の映画)
4.3
映画の主人公であるミシェルは、自分自身に対して混乱している。自分がどんな存在なのか、何ができるのかを知りたがっている。そして、自分ができることをどれだけうまくできるのかを知りたがっている。 ミシェルは罪の意識をほとんど表に出さない。彼は自分の行為から達成感を味わおうとし、決してその結果にこだわるようではない。何が間違ったのかを彼は認識していない。それで財布を盗まれた人が追いかけてきて自分の財布をくれと言った時、彼が見せた反応は恥というより失敗からの恥と見えた。彼はだんだんスリという行為に身を入れていく。そんなミッシェルを見つめ、助けるジャンヌ。おかげでミシェルは救われる。

映画はミシェルの混乱した精神状態を映像で描いたものにしては難しくもない上に退屈でもない。ミシェルがスリをし、グループを組んで動き回るときは興味津々だ。無味乾燥な画面と表情、そして音楽がほとんど流れていない索漠とした雰囲気の中でも、スリたちは緊密な行動で行動をする。映画の中では音楽がほとんど使われなかったが、これはリアルさを生かすための意図だと思う。そして、スリをする場面で手のクローズアップを見せてくれるが、顔の表情を見なくても、それに緊張感とミシェルの感情を感じることができる。
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