Uえい

スリ(掏摸)のUえいのレビュー・感想・評価

スリ(掏摸)(1959年製作の映画)
3.6
タイトルそのまんまスリの映画なんだけど、これが面白く見れてしまってびっくり。スリという行為もスリリングだし、繰り返してしまう男の心理にも同情してしまう。少しカウリスマキへの影響も感じた。

ミシェルはお金がなく、競馬場でスリをしてしまう。警察に尋問されるが、被害者が分からず証拠不十分で釈放される。手にした金は寝たきりの母に渡したかったが、後ろめたさがあり、近所に住む娘ジャンヌに頼んだ。

その後、スリの師匠に出会いテクニックを叩き込まれ、三人でスリを行う様になる。そんな中、とうとう母が亡くなってしまう。悪いことは重なり、警察の捜査の手が近付いていた。ミシェルはミラノに逃げ、イギリスなどでスリを二年ほど続けた。

そして再びパリに帰ると、ジャンヌはミシェルの友人ジャックとの子供を一人で育てていた。ミシェルはカタギに戻りジャンヌを支えると誓うが再びスリに手を染めてしまう。

師匠とスリを訓練し、次々に実践していくシーンが映像としてめちゃくちゃ面白かった。ピタゴラスイッチの様な完璧な連携が見事。「愛のむきだし」で盗撮を極めていくシーンがあったが、ここにルーツがあったのかも知れない。

ストーリーはクレプトマニアの話かと思いきや違っていた。途中ミシェルが、才能など特権のない人々は、特権を持つ人から盗みを働いても許されるべきという「パンの略取」などアナキズムを連想する哲学を披露するが、どうやらそうでもないらしい。母に行ったある事への後ろめたさから、捕まって罪を償う事で赦されるのではないかという気持ちでスリを繰り返していた。誰にでも起きうる境遇が根底にあり、思わず共感してしまった。
Uえい

Uえい