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四畳半物語 娼婦しののIMAOのレビュー・感想・評価

四畳半物語 娼婦しの(1966年製作の映画)
4.0
溝口健二の『噂の女』『新・平家物語』『赤線地帯』など脚本家として知られる成沢昌茂の監督作。この人は監督作が五本しかないけど、以前観た『花札渡世』が傑作で、この『四畳半物語 娼婦しの』もなかなかの傑作でした。

娼婦・しのはある客(旗本崩れのスリ糺)と知り合い恋に落ちる。しかし、彼女には情夫・竜吉がいてピンハネされながらも別れることができない。彼女の逃れられない運命を描く永井荷風原作の物語。

もう最初の出だしで三田佳子が着物を脱ぎ始める仕草から、とても「映画」なのである。あの仕草がキマっていないと途端白けるが、もうこの三田佳子の所作一つ一つが仕込まれていてとても説得力がある。全編素晴らしく構築されたワンシーン、ワンショットが連続するが、これも日本映画最盛期だからなせる技という感じがする。全てがコントロールされていて、それだけに古臭さも感じざるえない。そう、これはもう失われた至芸なのだ。これと同じようなことをスタジオシステムが崩壊した時に相米慎二はやってのけたが、あれは一部ロケセットでやったりした。だからこそ凄いのだが、あの時代でさえもうはるか昔だ。

成沢昌茂の脚本では豊田四郎と池広一夫が監督した『雁』が大好きで、時代背景的にも、果たされることのない恋というテーマ的にもとても似ている。他の監督作も是非観たい!
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