Balthazar

チャーリー・ウィルソンズ・ウォーのBalthazarのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

 These things happensed. They were glorious and they change the world… これは本当の物語だ。輝かしい成果で世界を変えた。
and they we fucked up the end game …でも最後でしくじってしまった

テキサス州選出の民主党下院議員チャーリー・ウィルソンはパーティー好きで陽気な人柄で知られ、「グッドタイム・チャーリー」のニックネームを持つお調子者。

一方、国防歳出委員会のメンバーを務める彼は、アフガニスタンに侵攻していたソ連軍に対峙するCIAの極秘予算を大幅に増額、当初の500万ドル→20億ドルに。手強いMi-24ハインド攻撃ヘリや機甲部隊に対抗すべく、ムジャヒディンへの武器供給を当初の旧式エンフィールド銃→最新鋭のFIM-92スティンガー地対空ミサイルやミラン対戦車ミサイル、重迫撃砲に強化するなど大規模な支援作戦(オペレーション・サイクロン)を実現させ、CIAから文民初の功労賞を贈られた。

「アフガニスタンを、ロシア人にとってのベトナムにしてやれ」

しかし、もう誰もがご承知の通り、アメリカがアフガニスタンのムジャヒディンに行った軍事支援は、それ以降、アメリカの災いの種として付き纏うことになった…。

ウィルソンの主要パートナーだったガスト・アブラコトスは倫理上の問題を孕んだ非合法ミッションを数多く管理していたことからDr.ダーティの悪名で呼ばれていた。CIAの作戦予算70パーセントを牛耳るアブラコトスは、カットアウトを通じてイスラム過激派にカネを渡していた。

アブラコトスとウィルソンがムジャヒディンたちに渡した兵器は、ソ連軍の撤退後、そっくりそのまま軍閥やアル・カーイダなどのテロリストに流れた。

専門用語的にはブローバックと言っただろうか。政府が隠密裏に行った工作活動の反動として国民が代償を支払わされる。

ウィルソン氏が支持し、CIAの支援を受けたアフガニスタンの軍閥には、ヘズブ・エ・イスラミのグルブディン・ヘクマティヤル(Gulbuddin Hekmatyar)、タリバンのジャラルディン・ハッカーニ(Jalaluddin Haqqani)司令官ら、後に厄介なテロリストの親玉となる人物が含まれている。

チャーリー・ウィルソン自身は先日亡くなってアーリントン国立墓地に埋葬されたが、生前のインタビューで「アフガニスタンのムジャヒディンに支援を行わないということは、それは第2次世界大戦中にヒトラーと戦う連合軍に支援を行わないというのと同様だ。当時、タリバンなんていう名前を知っていた人間なんて何処にいただろうか?」と自己弁護している。
当時は善かれと思ってやったことだ。将来、それが吉と出るか凶と出るかなんて誰にわかるもんか。

かつてCIAの味方でウィルソンの旧友だったジャラルディン・ハッカーニのグループは、2010年にアフガニスタン東部で7人のCIA情報部員らを殺した。

国際外交・諜報の世界では、敵味方の構図は常に相対的、流動的だ。
Balthazar

Balthazar