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ロード・オブ・ウォーのBalthazarのレビュー・感想・評価

ロード・オブ・ウォー(2005年製作の映画)
4.0
映画公開から10年以上経つ。
ユーリのモデルとされた悪名高い武器商人ヴィクトル・ボウトもいまは塀の中だ。

では、武器ビジネスは?と言えば、ますます盛況、大繁盛。戦争経済に不況の二文字は存在しない。

戦争は国を荒廃させ、文化も産業も破壊するが、大量の戦争難民とテロリスト予備軍が産まれる一方で、巨額のビジネスチャンスを手にし、イビザ島やバハマあたりのビーチリゾートで優雅にくつろぐ連中もいる。

フランス・パリのイスラム国兵士による無差別銃乱射テロ、それらの銃火器はベルギーの武器商人が売ったものだった。
グリーンカラーのビジネスマンにとっては儲けこそすべて。取引相手の思想信条や宗派がどうであれ、売り捌いた商品が流れる先で、どこの誰が殺されようが関係ない。たとえテロのターゲットが自分の国に向けられようと。
一方でイスラム過激派は、「憎むべき十字軍」と罵るキリスト教国家から聖戦を戦うための武器を調達している。大いなる皮肉。

ユーリのモデル、ボウトもアフガニスタンのタリバンと取引する傍ら、アメリカのペンタゴンとも契約関係を持っていた。

紛争が起きるところ、必ず武器がある。
武器のあるところ、必ず武器商人はいる。
リビアの内戦ではまるで新型ライフルの見本市だった。ロシア製のAK103、ドイツ製のG36、ベルギー製のFN2000にP90。

「誰が武器を供給しているのか?」というのは、最大のタブー。

武器商人は政府の非合法な諜報活動にとって有用なエージェント(代理人・協力者)だ。

たとえばアメリカのような国がCIAを使ってシリアのような他国の内戦に裏から介入し、反政府軍に対して非公式に武器を供与し、支援しようとする場合。

北朝鮮は外貨を稼ぐために武器輸出に余念がない(ミサイル発射は販促キャンペーンとも言える)が、その代理店の役目をしているのも武器商人だ。

異教徒を奴隷に貶め、容赦なく首を撥ねるあの残虐非道なイスラム国でさえも、"カリフ"バグダディ師じるしの公的許可証を発行して外国の武器商人が支配地域で営業することを許しているのだ。
異教徒の武器を、異教徒から買い、異教徒を殺す。

戦場のカタログ通販。
注文が入り次第、沖合いでランデブー、商品を受け渡す。大型貨物船から小さな漁船に積み替えて深夜上陸、あとはトラックを乗り継ぎながら陸路で国境地帯を超える。

シリア内戦の長期化に伴い、品薄感のおかげで最近は武器の闇市場価格は高騰中、状態の良いカラシニコフなら1丁12〜13万円で取引されているという。
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