三樹夫

救命士の三樹夫のレビュー・感想・評価

救命士(1999年製作の映画)
4.3
監督スコセッシ、脚本ポール・シュレイダー、主演ニコケイの面白い三位一体。主人公は不眠症のNYの救命士と、これは『タクシードライバー』なのかと思ったら、映画始まって完全に狂っているニコケイの目のアップにニコケイの厭世的な独白と、こんなの『タクシードライバー』じゃねぇかとテンション爆アゲ。救済されたい主人公のNY地獄巡りの傑作だ。
とにかくNYの治安がとんでもないことになっていて、搬送される患者も救急病院も全部狂っとる。登場人物が全員イカれてるハイな面白さがある。NYの救命士の密着ドキュメンタリーパートなんか一生観ていられる。救急病院は患者で廊下まで溢れかえっているが、患者のほとんどがジャンキーかホームレスかあたおかのどれかというハードコアガチャ状態。医者も負けじとジャンキー患者をネチネチ罵倒するNY式診察かまして、守衛のおっさんも患者を追い返すために雇われてるみたいな地獄の門番状態。NYの救命士はペアで乗る決まりのようで、ニコケイの相棒が合計三人出てくるが三者三様の狂いっぷり。こんな状態ではニコケイが狂うのは当然と思うが、当のニコケイも舐めんじゃねぇぞと狂いっぱなし。スコセッシはNYの地獄模様をやたらハイテンションで演出していて爆笑してしまう。NY…狂った男…それならばポール、キミにきめた!と脚本はスコセッシからの依頼でポール・シュレイダーとなり、NYの地獄がギュウギュウ詰めになった映画となっている。

『タクシードライバー』みはあるものの、また違った映画となっている。少女の命を救えなかったことが主人公の心に重くのしかかり、誰かを救えば自分も救われると思い込んでいる、魂の救済を求める主人公となっている。人を救う行為の象徴として電気ショックが劇中何回か行われるが、もの凄く嫌な感じがする撮られ方をしており、電気ショックが加害的な行為にすら見える。人を救うことが主人公の救済となるのか、真の救済とはと、何から何まで常人離れしている作品で、スコセッシの中でもかなりの上位にくる作品だ。
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