猫脳髄

オフィスキラーの猫脳髄のレビュー・感想・評価

オフィスキラー(1997年製作の映画)
3.3
架空の映画スティルで女優に扮した写真作品"Untitled Film Still"(1978)で知名度を得た現代美術家シンディ・シャーマンが監督した異色のスラッシャー・コメディ。出版社で校正係を担当するさえないキャラクターのキャロル・ケインが、合理化のために在宅勤務のパートタイマーに格下げされたことをきっかけに、自分を見下した社員たちに血みどろの復讐を開始するという筋書き。

90年代も後半になり、スラッシャーは相対化され、サイコ・スリラーが前景化する時期にあたる。本作は、そこに社会進出を進める女性内部での分断と対立のテーマを持ち込んだ。自宅で母親を介護しながら、新たに導入されたコンピュータに楽しみを見出すハイミスが、キラキラ系のデキる女たちを血祭りにあげるというシニカルな着眼点が本作の特徴といえる。さらに、ラストの転調で同性間の対立を越えた女性のしたたかさを映し出すことで、高を括った観客を震え上がらせる。

サイコ・スリラーを主軸にする割にはケインの前半の性格描写が生硬でやや淡々とし過ぎているきらいはあるものの、犠牲者の死体を自宅に集めて家族ごっこを楽しんだり、腐敗するボディパーツを家内に設えてみたりと趣向を凝らす。ゴア表現も中盤から盛り上がり、クライマックスはなかなかの血みどろぶりを堪能できる。カメラワークも含めて全体的にはスタティックな基調で、90年代らしいクールさが漂うが、それも今や好きずきかもしれない。
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