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お引越しのSIのレビュー・感想・評価

お引越し(1993年製作の映画)
5.0
2021.10.13
自宅TVにて鑑賞

京都・夏。父の別居に納得できない一人娘の11歳の主人公は、両親の身勝手さへの苛立ちや学校でバレる恐怖を感じながら、父のもとを訪れたり立て籠もったり、両親を取り持つ努力をするも、思い出の地・琵琶湖への旅行で両親の決裂は決定的となり、主人公は琵琶湖を放浪し遂に親の離婚を受け入れる。

相米慎二×奥寺佐渡子。
日本映画界のマスターピース。神がつくった作品。
年を重ね温和になった相米慎二。奥寺さんの非常にウェルメイドな脚本を尊重してつくったため、カメラもホンも抜群の作品に仕上がっている。
しかし終盤は、監督の狂気がこれでもかと爆発してしまった。
琵琶湖で祭りの終わった会場を放浪する主人公。月に向かって吠える。台詞無しのシーン、10分強。映像の強さ、フェリーニばりの彼の才能をこれでもかと見せつけるが、これでは一般には受けないだろう…。優秀な編集できるプロデューサーがいたらと思うと、悔しい。もっと多くの人に届いていたはず。蛇尾もいいところ。
クライマックスの「おめでとうございます」連呼。危険すぎる。奥寺さんの脚本からはみでる狂気。これが、庵野さんのエヴァンゲリオンに繋がっていく。

「やめとけお前ら顔がブスになるやろ ただでさえ顔がみれんことないのに」
言い回しもキャラも、上手いんだよなあ。

アルコールランプを放り投げ火をつけるカット。本物。
狂った母親に立て籠もりから引きずり出され、トイレに座る主人公にグーっと寄っていく。ワンカットで泣かせる長回し。美しい。
墓場に大量の灯籠。京都の夏の祭りの景色が、主人公の孤独の対比として美しい。
老人に水をぶっ掛けられる演出も良く。
琵琶湖のお祭りシーン。金がかかっている大量のエキストラ。

田畑智子は言うまでもなく。
鶴瓶も良い。
相米さんのえげつないテイクの長回しは、身体性が出やすいから子供の方が輝くんだなと今更ながら。

ポスターが悪すぎる。宣伝も良くなかったのだと予想。
傑作です。
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