エリーン

独裁者のエリーンのレビュー・感想・評価

独裁者(1940年製作の映画)
5.0
これを、ホロコーストが始まる前、ヒトラーがノリに乗っている時に制作発表したチャップリンの勇気にまず敬服する。映画の力で戦ってくれて本当にありがとう。
今見てもめちゃくちゃ笑えるシーンばかりで、コメディ映画としての完成度にも太鼓判を押したい。ナチスやドイツやイタリアの抽象の仕方も上手い。チャップリンが批判、皮肉りたいのはドイツの人々ではなくて、ドイツの政治体制だからと考えると、抽象表現やデフォルメの巧みさに驚く。バランス感覚がすごい。誰も傷つけず、でも明確な批判の意図が万人に伝わる。
最後のスピーチは、一呼吸おいて、チャーリーチャップリンとして話していると思う。全く現代にも通ずる、世紀の名スピーチ。改めて、あの恐ろしい時代に、自分だけでも声を発しようと勇気を振り絞り映画作りをしてくれたチャップリンに、最高の敬意を払いたい。

またスピーチでも黒人や人種間の平等や福祉について触れたことでハリウッドで赤狩りにあい、チャップリンがアメリカを追放された事は、どんなにその後取り繕ってもアカデミー賞を授与しても消えないハリウッドとアメリカの汚点であるということは、はっきり記しておきたい。
エリーン

エリーン