トムヤムくん

アウェイ・フロム・ハー 君を想うのトムヤムくんのレビュー・感想・評価

3.8
アルツハイマー病を患った女性が、夫さえも忘れていく中で介護施設で出会った男性に恋をしていく話。女優サラ・ポーリーの長編映画監督デビュー作。

主演のジュリー・クリスティは、本作で数多くの映画賞を受賞。その年のアカデミー賞にもノミネートされ、もし受賞すれば『ダーリング』以来42年振りの主演女優賞受賞という快挙であったが、惜しくもあと一歩及ばなかった。

まぁでもジュリー・クリスティの役はアカデミー賞受けし辛い役柄だなーとは確かに思った。難病とはいえインパクトが残りづらい「静」の演技であることや、ほとんど助演と言ってもいい役柄と出演時間なので、受賞できなかったのは割と妥当だったのかもしれない。(一方受賞したマリオン・コティヤールの熱演と比較すればさらに印象が薄れる)。

個人的には、旦那と不倫関係に陥るオリンピア・デュカキスが流石の貫禄と存在感で惹かれてしまった。この年齢でミステリアスな少し危ない雰囲気を纏う女性を演じられるのは凄すぎる。どこか守りたくなるような脆さ・儚ささえ感じられた。

アルツハイマーというこの手の作品で綺麗事にはならないのはサラ・ポーリーの誠実さを感じられたし、淡々とした作風なのに随所にガツンと来るようなパワーも持っているのはかっこよかった。

あと一瞬しか出てこないけど、赤髪の若い女の子と話すシーンは地味だけど本作のベストシーンだった。