てつこてつ

人間の証明のてつこてつのレビュー・感想・評価

人間の証明(1977年製作の映画)
3.5
これだけ寒い日々が続くと、何故だか、自分自身が純真無垢な少年時代を過ごしていた70年代、80年代の映画が無性に恋しくて・・。

森村誠一原作のこの作品は、当時、CMでもさんざん流れてジョニー山中が歌う哀切漂うブルース調の主題曲が記憶にハッキリとはあるものの実は未見。

角川映画が邦画界で旋風を起こすきっかけになったと言っても過言ではないほどの超大作。ジョージ・ケネディという当時のハリウッドで大流行してたディザスタームービーの大作を中心に話題作に立て続けに出演していた紛れもないハリウッドスターを登場させた初の日本映画かも。

終盤はニューヨークのロケも敢行し、それなりのカーアクションなんかも展開され見どころあり。

ストーリーの構成も丁寧。東京で起きた一人の黒人青年の刺殺事件の裏側に隠された様々なキャラクターたちの悲喜こもごもの描かれ方も細かい。

ただ、松田優作演じる主人公の刑事が抱く終戦後の日本で乱暴の限りを尽くした米兵への恨みの感情には、さすがに昭和と言っても後半に生まれた自分には、なかなかすんなりとは共感できない。

でも、俳優としての松田優作の良さを本作で改めて痛感した。ジョージ・ケネディ演じるニューヨークの刑事とのやり取りではそれなりの尺の英語の台詞があるが、しっかり練習した感が伝わる。

若き日の岩城滉一のダメダメなお坊ちゃま役も初々しく、新鮮。

ぶっちゃけ、この作品も序盤で、ある程度犯人が分かる内容ではあるが、ファッションデザイナー界の重鎮という役どころの岡田茉莉子のキャラクターの描かれ方が途中までかなり浅いなあと鑑賞していたが、終盤のスピーチシーンからの流れでやはり大女優らしい名演技を披露してくれて、感銘を受けた。

霧積の風景も美しい。作品の核となる西条八十の詩もいいね。
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