小林大斗さんの感情表現が素晴らしかったです。
序盤は感情を押し込めるような、無感情に見えるけれど奥に秘められているものが透けるような、そんな揺れ動き方で。打って変わって終盤はすべてをを曝け出して、男の本当の感情を発露させているようで、苛烈さと繊細さが入り混じっていました。

また月丘憐さんが発する、無邪気で純粋なようで達観しているようにも聴こえる絶妙なニュアンスの台詞がとてもとても魅力的で、男が惹かれるのも頷けます。

そしてなんと言っても物語としての構成や、映像としての切り取り方が非常に巧みでした。この世界のとある真実が示された上で作品は幕を閉じるのですが、その素っ気なくも明確な示し方が残る余韻を強めていたと感じます。
とある真実については、どこにでも転がっている話だということが哀しくもあり、けれどやはり懸命に生きた証でもあり、それは私たち一人ひとりにも当てはまってくることなのかなと深く考えさせられました。
蛇足かもしれませんが、結末まで見届けた上でもう一度最初から観ると、なるほどと唸る描写がいくつもありました。

細かい好みの話をすると、冒頭の最初に身体の一部が映り込むところで思わず息を呑むくらいドキッとしました（以前からこの部位が惚れ惚れするくらい綺麗だと感じていたので……）。
加えてお二人の衣装が驚くほど素敵でお似合いでした。
私が一番好きなシーンは、男が女を背負って覚悟を決めるようにゆっくり目を開くところです。このシーンで私は「刹那の永遠」を最も強く感じました。

観ていてなにか心が動かされる、素晴らしい作品です。鑑賞の機会があれば是非。