記憶を失い倒れていた正体不明の若い⼥性・桜を、温泉の⽀配⼈・佐⼭が発⾒する。⾏く当てのない桜を放っておけず、佐⼭は温泉で働かせることに。桜は真摯な働きぶりや折り紙、不思議な仕草で客を和ませ、温泉に温かな空気をもたらしていく。佐⼭はそんな桜を⾒守りながら、趣味の落語に打ち込み、1 か⽉後の宴会場での発表会に向け準備を進めていた。しかし本番を⽬前に、桜は突然姿を消してしまう。部屋に残されていたのは「ありがとうございます」と記された⼀枚の⼿紙だけ。その不在にはどこか幻のような余韻が漂う。佐⼭は選んだ演⽬「巣鴨の狐」を⾼座で語りながら、彼⼥への想いを静かに重ねていく。
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