カッパロー

GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊のカッパローのレビュー・感想・評価

GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊(1995年製作の映画)
4.9
電脳世界に浮遊するゴーストは生命足り得るのか。。。壮大な問題提起。

この作品の素晴らしさを説明するのは余りにも野暮だろう。偉大なるセル画にて描かれる、看板と高層ビルの立ち並ぶ近未来の都市、躍動するサイボーグ、大いなる問いかけ、均一性と脆弱性が表裏一体であるとの看破。たった80分から文化が生じた、その意味を理解した。

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ちょっと現実の話をしよう。

深層学習により単語の羅列から「それらしい」単語を連続して出力させられるようになった大規模言語モデルが、意識のある生命体のように振る舞い自己応答し始めた現実の2023年。本作品で提起された議題は、既に語り尽くされたclichéとなりながらも、その重要性は全くと言って良いほど毀損されていない。それどころか、AIと一般市民の接近は、ますます人格とは何か、生命とは何か、ゴーストとは何かという疑念を否が応でも生じさせてしまう。

現実と本作品の乖離を指摘するなら、医工の境界領域についてだろう。身体性の拡張は大きな関心を呼び世界中で研究開発が進んでいるものの、拒絶反応や神経伝達の問題など、未だ「サイボーグ」と呼ばれる域には達していない。しかしながら、それ以外、すなわち電脳世界やAIなどのソフト面では、既に作中と同様の技術レベルは達成されつつある。ハードすらも同様にこの作品に追いつくとき、ゴーストは殻(シェル)を獲得し、物語は具現化を迎えるのではないか。
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