まこやん

グエムル -漢江の怪物-のまこやんのレビュー・感想・評価

グエムル -漢江の怪物-(2006年製作の映画)
4.0
【ネタバレ注意】
日本人から見ると、奇怪な映画だと思う。
公開当時、反米映画だと報じられた本作。確かに監督もそうコメントしているが、私には「韓国」そのものを撮った映画のように思える。
怪物が漢江で暴れ狂った後は、コメディにも見える家族ドラマが続くが、これは、韓国史、韓国文化を知っている人間からすると、にやりとも思える演出なのだ。

この家族はまさに韓国そのものを表している。権威にはめっぽう弱い父親、とにかく短気で火炎瓶を投げる弟、アーチェリーの試合で決定打に欠く娘、そして、どこか間抜けで頭の弱い主人公。彼らが、自分ではどうにもできないような困難に直面する。

パニックで逃げまどい、葬式で泣いて暴れて、友人には密告され、デモに催涙ガス、
どれもが「韓国っぽい」のだ。
ラストは家族を苦しめた事件に関するニュースを報道するテレビを消して助かった少年とご飯を食べるソン・ガンホ。自分たちではどうすることもできない嵐が去ったらいつもの風景が戻る。大国に挟まれて嵐が去るのを待つことしかできない韓国の歴史を連想させる

韓国らしさをどこかユーモラスに、卑下するかのようにとらえる。この風潮は、自尊心を重んじる韓国ではなかなか撮れなかっただろう。だからこそ反米というテーマを掲げて隠れ蓑にしたように思える。

もちろん暴れまわる怪物と一家の戦いのメインテーマはもちろん完成度が高いので娯楽作品として十分すぎるほど楽しめる。
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