第一次世界大戦前夜。武器商人として財を築いた富豪たちがある島に集まり宴を催す。官能的な小説「アフロディーテ」に出てくるそれぞれの役と衣裳を与えられた男女は、宴の数日間、小説と同じ性の快楽に身を投じる。召使たちの裸の群舞を楽しむ者、女性同士で身を重ねる者、執事を挑発する者。絡み合う男女が足の踏み場もない程に大広間を埋め尽くす。

主催者の富豪に家の経済を握られた婦人は、若い娘を一人残して島を去る。美の女神アフロディーテの役となったのはその娘だった。

「私生活のない女」「ブレスレス」のヴァレリー・カプリキーが２０歳で出演した官能ロマン。身体を張った役と堂々とした演技がどの作品でも強烈な印象を残す彼女だが、本作はデビュー間もない頃。ヴァレリーが美しい肢体を見せつける場面は島へ向かう船の中で、身体に化粧水を塗る場面が目立つ程度で意外と少ない。富豪を演ずるのは「荒野の七人」のホルスト・ブッフホルツ。彼が船室に仕込んだマジックミラー越しに彼女を愛でる様子が実にイヤらしい。

性の宴がクライマックスに差し掛かった頃、アフロディーテ役のヴァレリーにホルストおじさまは媚薬を飲ませて、快楽に身を委ねさせようとする。金持ち婦人に囲われていた若い男性詩人が、おっさんたちの毒牙が彼女に迫るのを食い止める。そこにサラエボで皇太子が殺されたとの報が届く。武器商人たちが戦争へと目の色を変える中、逃げ延びた２人が見つめ合うところで映画は幕を閉じる。

延々と続く性の饗宴場面は、身体や行為を美しく撮る目的ではなく、そうした場面をたれ流すように過剰。筋を追う映画としてはとにかく面白みがない。これ以上の尺だと性描写で胃もたれしそうw。そんな中でヒロインであるヴァレリーは、映画で中での存在自体が神々しい。日本ではしばらく名前を聞かなかったが、近頃テレビドラマ「アストリッドとラファエル」に出演しているようだ。今も俳優として活躍しているのは素敵なこと。