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プラトーンのヨウのレビュー・感想・評価

プラトーン(1986年製作の映画)
3.9
ベトナム帰還兵である監督自身の実体験に基づいてベトナム戦争の実態を生々しく描く。退廃したアメリカ軍の内部状況。執拗なベトコンのゲリラ攻撃。混沌とした戦場下で纏わりつく不安と憎悪が体内を蝕んでいく。緊張が張り詰める空間に我々共々押し込められ、異様な逼迫感に襲われる。人間の汚い本性が露呈してしまう展開にやりきれない思いに駆られた。戦争は関わる者全ての精神をズタズタに引き裂いてしまうという警鐘を端的に表しているのだろう。善と悪の天秤すら機能しなくなる内面的破壊模様はあまりにも酷い。この惨禍を二度と引き起こしてはならないという反戦への意志が改めて強まった気がする。危機迫る戦場において繰り広げられるシリアスかつフラジャイルなヒューマンドラマで狂気の核心をつく戦争映画。凄まじい出来事の数々を目にした主人公テイラーは決して過去から逃れられないが先の人生を懸命に歩むことを決めた。その姿に監督自身の思いを反映させたのだろう。不気味な余韻を残しながらも感慨深い気持ちに至らせる傑作だ。既視感のあったエリアスの最期が記憶に強烈に焼き付いた。歳を重ねるごとに何回も観てそのメッセージ性や真髄を噛み締めていきたいと思えた。
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