レオス・カラックス監督
"アレックス三部作"以来の再会。
30年ぶりに監督作品を鑑賞しました。
覆面作家ピエール(ギョーム・ドパルデュー)と「姉、弟」と呼び合う母マリー(カトリーヌ・ドヌーヴ)と、森に囲まれたノルマンディの城館で暮らしている。婚約者リシューとは結婚目前の中、突然現れた異母姉と名乗る女性イザベル(カテリーナ・ゴルベワ)の出現により、今の生活を捨てて一緒に暮らし始める…
ピエールと一族の破滅を端正だけれど印象的な筆致で描きます。
「白鯨」で知られるメルヴィルの原作は、映像、音響、編集でカラックス節にリビルドされています。
冒頭の戦争フィルムの爆撃シーンからの静謐な城の朝の風景。
コントラストが鮮烈です。
映画を彩るガジェットも印象的です。
一族の象徴である城・庭・バイク
特に、ピエールが出会う、インダストリアルなテロ組織の造形が良いです。
リーダーが指揮棒を振い演奏されるロッケストラ。
沢山のギター、ベース、ドラム、ドラム缶…が鳴らすノイジーな音。
無駄にカッコいい空間の大判振る舞い(笑)
ジェラール・ドパルデューを父に持つ、ギョーム・ドパルデューは、バイク事故後もリハビリをしながら、数々の作品に出演、その後片足切断に至るも義足で演技を続け、映画撮影中に急性肺炎となり37歳の生涯を閉じています。
この作品の撮影時は、バイク事故から5年後。バイクに乗ったり、足を引きずりながら演じる怒りの演技は、本人ともシンクロし強い印象を残します。
イザベルを演じたカテリーナ・ゴルベワも、44歳で亡くなっています。
(カラックスの次作の『ホーリー・モーターズ』は彼女に捧げた作品のようです。)
ギョーム・ドパルデューとカテリーナ・ゴルベワは破滅的なカップルを演じ、スクリーンに焼き付けられるような強い印象を残しました。
カラックスとの久しぶりの邂逅と共に、2人の演技に出会えたことも大きな収穫になった作品です。