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エンド・オブ・オール・ウォーズの缶のレビュー・感想・評価

3.9
マーク・ストロング目当てで見たのだが、群像劇としてとても興味深かった。仏のようなマーク・ストロング。

あまりに残虐な日本軍の行為の数々に吐き気がしてくるが、作品自体としては、想像を絶する怒りや苦しみの中で一瞬生まれるつながりの描写が印象に残っている。脆くて尊いが、終わった瞬間の現実に引き戻される感覚。単なる捕虜の美化や日本軍のカリカチュアに落とし込まれていなくて見応えがあったし、いろいろ改変はあるようだが、日本軍がきちんと当時使われていた用語を含めた日本語を話していて誠実に作られていると感じた。というか普段の欧米映画で見るアジアの扱いが雑すぎるだけなのかもしれないが…
どっちがいい悪いではなく、精神性や価値観の違いとして描かれているところも、発表会の夜に(権力のインバランスはあれど)一緒に笑うことができるところも、とても人間に寄り添っていると感じた。「人の命が羽よりも軽い」軍の捕虜という異様な状況でどうやって人間らしく生きるのか、という問いに関する兵士たちのさまざまな答え。

あぶなっかしいロバート・カーライルと、だんだん色が変わっていくランニングが妙に記憶に残っている。
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