Oppailot

オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドンのOppailotのレビュー・感想・評価

5.0
 この版で初めて「オペラ座の怪人」に触れました。名前だけなら誰もが聞いたことあるであろう非常に有名な作品ですが、この度本作を鑑賞して、何故それほど有名となったのかを理解いたしました。
 オペラ歌手クリスティーヌを主人公に、彼女に一方的な恋をして彼女を手に入れようとうする「怪人」と、その魔の手から彼女を守ろうとする恋人ラウルの3人の物語。
 それぞれ異なる立場や想いが交錯し、鑑賞後は一緒に視聴していた知人らと「誰に感情移入したか」という話題になりました。
 この「誰に感情移入するか」という点は人によって意見がわかれるようですが、自分は基本的に怪人の心境に深く共感をする結果となりました。自分は恋愛においては殆どいつも怪人の立場。勝手に一方的な恋をして、意中の相手を陰から見つめ、そして相手が自分の思い通りにならないことに身勝手な憤慨をする。そんな性格ゆえに、物語全般において怪人の心境に強く共感する立場にありました。
 しかしながら、自分はクリスティーヌを手に入れるために強引な手段に出た怪人と異なり、相手を愛すればこそ相手の幸せを願って何も迷惑をかけることなく自分が消えてしまうべきだと考えてしまいます。ゆえに序盤は怪人の境遇や心境に深く共感したものの、その後彼が起こした行動全般には納得ができず、物語後半では引き続き怪人の心境に共感はしつつも、怪人から恋人を守ろうとするラウルのほうにも感情移入していく形となりました。
 そしてクライマックス。終局では怪人よりもむしろ、怪人を愛し哀れみながらも彼のもとを立ち去らざるを得ないクリスティーヌへと感情移入が移り、その複雑で強烈な心境に胸がいっぱいになりました。終局の一連の展開には本当に胸を打たれるものがあり、この瞬間に本作がなぜ名作として世に広く知られているのかを理解することとなりました。
 本作はそのストーリーもさることながら、印象的な楽曲、そして演じる役者さんたちの歌唱力と演技力の高さもまた強く印象に残りました。特に主演のクリスティーヌ役の方は、単純な歌唱の能力はもちろんのこと、劇中で初めて歌を披露するときの怖気づきながら歌い始める様や、初めて直接対面した怪人の前で恐れを感じながら歌う様などが見事に表現されており、その時々のクリスティーヌの感情が歌声から自然と伝わってきて、歌にこんな演じ分けができるものなのかと大変驚きました。
 レビューというより単なる個人の感想文のようになってしまいましたが、このようなものを書き残したくなるとても印象的な作品でした。作中では殺人が行われる場面なども度々ありますが、舞台劇であるため惨悽な描写は控えめで、お食事中の鑑賞でも多分大丈夫だと思います。
Oppailot

Oppailot