1959年製作の中山信夫監督作品のこの映画は嵐寛寿郎三百本記念作品だと言うことだが、実は元ネタがあって、1925年(!)の二川文太郎監督で坂東妻三郎主演の長編サイレント映画の「江戸怪賊伝 影法師」の方がオリジナルである。
田沼意次の悪政、松平定信の正義という学校の歴史で習ったそのままのわかりやすいモチーフなんだけど、影法師は最後まで自分の身分は明かさずに世直しを続ける。今風に考えれば少しじれったい感じはするけれど、実に潔くて、観ていて清々しい。
坂東妻三郎の殺陣に比べると、アラカンの殺陣は少し大人しい感じだが、十分に胸がすく。60年代の絢爛豪華な東宝東映作品群への布石ともいうべき作品(誉めすぎか)。