バートロー

ロッキーのバートローのレビュー・感想・評価

ロッキー(1976年製作の映画)
4.5
ロッキーシリーズは王道のエンタメスポ根映画的に見られがちだけど、このロッキー1はアメリカンニューシネマの影響を色濃く受けたイタリア系移民の人間ドラマ。ボクシング自体のシーンはそれほどなく、試合に関しては冒頭と最後の十数分のみ。その試合のシーンも今の映画と比べるとまだまだまだまだまだまだまだだが、他のことには目もくれず、ただひらすら恋人の名前を叫び続けるあの有名なシーンは思わず感極まって泣いてしまう。

マフィアの小間使いをしながらその日をしのいでいた29歳の三流ボクサー、ロッキー。気まぐれに舞い込んできたヘビー級王者アポロへの挑戦権。「どうする?」「勝てるわけがない」絶望的な力の差を知っていたため、多くの人と同じようにロッキーは挑戦を尻込みする姿がアメリカンドリームを夢見て移住し、貧困にあえいでいたイタリア系移民と重なる。とにかくロッキーが魅力的な人間で、ロッキーバルボアの「良さ」がきちっと描写されているのでどっぷりと感情移入出来る。イタリア系移民だけではなく、ベトナム戦争後のアメリカをどれだけ勇気付けたかは想像出来ない。その中でも救われたのは困窮した生活を送っていたスタローン自身だったのは言うまでもなし。自ら脚本を書き、映画会社に売り込んでヒットさせるというロッキー以上のアメリカンドリームを成し遂げたというなんとも稀有な作品。

改めて観ると70'sソウルミュージックが映画にバッチリとあっている。顔をボコボコに腫らしてもロープにしがみついてゴングが鳴るのを待つロッキーとアポロの姿はキリストのように尊い。泣ける。