一本の木のない、見渡す限りの荒野。
ひたすら開墾作業、果たして開墾と呼んでいいのか解らない、意味のない土木作業。
食糧はない。具のない水の様な粥をすするだけ。
掘った穴に板を掛け土を盛り屋根に、窓は筵を掛けた程度の収容所。
空腹故、草の根と実、捕獲した野鼠。挙句は他人の吐しゃ物まで口にする。
収容時、持参した布団と僅かな衣類だけでは防寒出来る訳がない。
毎日 多くの人間が飢えと寒さで亡くなっていく。
死人は布団に包んで埋葬するが、そんな布団はおろか着衣を剥いで食糧と交換する有様。
そして死体は当然・・・・・・・。
ただ穴を掘って埋めただけ。
誰がどこに埋葬されたか判らない小山の群集。
そんな収容所にやってきた女性。
夫に会うため、上海からやって来た。
「夫は・・・・」
「遠くに出ています・・・・・」
夫はつい先ごろ亡くなったばかり。
言い出せない。
遺体を見せられる訳がない。
何故なら――― 裸のまま埋葬されているから。
何故なら――― 五体満足に揃っていないから。
何故なら――― どこに埋まっているかも判らないから。
「・・・・・先頃、亡くなりました。」
無くなった事実を知った妻の慟哭。
手当たり次第、盛り土を掘る。
せめて人間らしい最後を。
手伝う8番壕の仲間たち。
遺体を探す作業。
やがて見つけた夫の変わり果てた姿。
遠く青い空に果てしない黄土の砂漠。
そこに火葬の炎。
ストーリーに似つかわしくない美しいコントラストだった。
その炎。
その赤い色。
その暖かさ。
そこにいた囚人、皮肉にも生への渇望が湧き出したんだと思う。
観ているこっちまで揺り起こされた。
愛する者を失った妻の声。
嗚咽。
慟哭。
その声に誰もが遠く離れてしまった家族を想ったはず。
誰もが心の中で泣いたことだろう。
報告書と生存者の証言から作られた作品。
多くの右派が“名誉回復”を受けたが、未だされない人間も存在している。