【謎の確執】
本作と同じ題材の『ロイ・ビーン』と比べると、ウィリアム・ワイラーの演出はやけに堅苦しくケレン味がない。
しかし、流れ者のゲイリー・クーパーと悪徳判事ウォルター・ブレナンが対峙する何とも形容し難い【構図】は、のちのアンソニー・マン監督『西部の人』と同様にカリフォルニアンならではのアメリカ原風景とも言え、壮観そのもの。ある意味、本作と表裏一体の関係。
元来が西部劇作家ではない(文芸的な雰囲気の…良くも悪くも)ワイラー監督だが『友情ある説得』のような土着的で強かなドラマも作れる才能もあるから、こういうアメリカ的で雄大な映像美を撮らせると天下一品という気ががする。
本作はむしろウィリアム・ワイラーというよりも撮影監督のグレッグ・トーランドによる映画のような雰囲気もする。『市民ケーン』や『怒りの葡萄』同様に彼ならではのディープ・フォーカスが冴えに冴え渡る。
古き良きモノクロ西部劇。実直かつ味わい深い名品だと思う。