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ルパン三世 カリオストロの城のmitakosamaのレビュー・感想・評価

4.2
中学の時テレビで放送されビデオに撮って何十回と見たわ。
これがなまじ完成度が高過ぎて有名になったので、「カリ城」と「死の翼アルバトロス」と「わが愛しのルパン」がルパンの代名詞になってもうた。本来、一番ルパンらしく無いルパンなのに。

自分の中の定義として、今作は“最後のマンガ映画”と位置づけてる。
公開が79年。ファーストガンダムの放映年であり、ヤマトブームのあと。正にアニメの消費者の年齢が上がる時期。そして80年代に入りオタク第一世代が台頭。
“テレビまんが・マンガ映画”が“アニメ”に変わる転換期。そんな時代の中で、“マンガ映画”の牽引をしてきた東映動画の流れを汲む作品。

今作の持つマンガ映画的表現に、大塚康夫らの縦横無尽な作画は言うまでもないが、それ以上に気になるのは“音”だなぁ。
とにかく映画全編を通して、常に音が鳴ってる。BGMは勿論、効果音に加え、さらに音が重なる。
例えば、ルパンが飛んだり跳ねたりする際の「ぴょ〜〜ん」とか、落ちる時の「ひゅ〜〜ん…チャン」とか。
例えば、コミカルなシーンからシリアスなシーンに変わる際の心理描写で「シャーン」とか鳴る。
これって音の漫画的なデフォルメであり、ジブリ以降ガンガン淘汰された表現なんだよな。
こういう所1つとってもジブリ以前以降で表現の志向が変わっていくことがわかると思う。

ストーリーの凡そのプロットは三船敏郎の「大盗賊」を元にしている。またカリオストロ公国の城の描写の一部は「王と鳥」の引用。江戸川乱歩の幽霊塔もイメージソースの1つ。シトロエンの壊れるシーンは「憲兵シリーズ」。
「わが愛しのルパン」のラムダが、スーパーマンの銀行強盗ロボからの引用なのも含め、この時期の宮崎は割と他からのオマージュが見受けられるのも特徴だと思う。

カリ城に関しては言いたいことが多過ぎて、描き切れない。緑ジャケにフィアットというファーストシリーズのデザインを押したことによる、赤ジャケセカンドシリーズに対して暗に否定したことも興味深い。

クラリスは典型的な“囚われの姫君”だが、宮崎ヒロイン特有の凛とした強さも兼ね備えてる。逆に不二子がかなり落ち着いたイメージ。ルパンも相当枯れたオジサンとして描いたので相応に年齢を重ねた感じ。

何が凄いってさ、この超傑作を実質3ヶ月で作ったんだってよ。宮崎・大塚の非凡さが最も溢れてるエピソードだな。
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