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The Black Ball(英題)
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『The Black Ball(英題)』に投稿された感想・評価

["この国には野原に埋もれた恋物語があまりに多い"] 70点

2026年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。ハビエル・カルボ&ハビエル・アンブロッシ長編二作目。フェデリコ・ガルシア・ロルカの未完成の同名戯曲にインスパイアされた一作。彼らは"ロス・ハビス"と呼ばれる有名な元カップルで、共同監督としてTVシリーズなどを製作し、クィアエンターテイメント界を席巻してきた。今回は同じコンペにペドロ・アルモドバルとロドリゴ・ソロゴイェンがおり、スペイン映画界の継承が行われたような回でもあった(実際にカルボ=アンブロッシとソロゴイェンは評判良かったが、アルモドバルは微妙だった)。物語は1931年、1937年、2017年の三つの時間軸を交互に移動しながら、スペイン内戦前夜、内戦期、現在に生きるゲイ当事者の姿を描いていく。一見関連のなさそうなそれぞれの挿話が見事に結びつき合うのは、昨年のカンヌでサプライズ選出されたマーシャ・シリンスキ『落下音』にも似ていた。1932年、名家の息子カルロスは父親の命令でカジノ経営の委員会に入ろうとするが、委員の投票によって否決される(このとき使用されるのが白い玉=賛成と黒い玉=反対なのだ)。父親は軟弱者と罵るが、カルロスはもうグレナダでは嘘を付かずに生きていくことは出来ないと知っている。1937年、小さな村に暮らすトランペット奏者の青年セバスティアンは、イタリア軍から誤爆されて村と家族を失い、通りかかった国民軍に助けられたことでなし崩し的に参加することになる。ある時、人民政府の将校であるラファエル・ロドリゲス・ラプン(彼は実在の人物でロルカの恋人だった)の監視を任されたセバスティアンは、彼に惹かれていく。2017年、歴史家のアルベルトは疎遠だった母方の祖父の死を知り、彼の遺言と共にある紙束を手渡される。その過程で仲の悪い母親と向き合い、自身に流れるクィアの血脈を知る云々。中盤で登場するロルカの研究者イサベラは、"スペイン人は遺族が羞恥心から故人の資料を破棄してしまうので伝記が書けない"と指摘していて、後にロルカ本人も"この国には野原に埋もれた恋物語があまりに多い"と指摘している。本作品はそんな彼らの物語を丁寧に掘り起こしていく。また、イサベラはロルカ作「黒い玉」について、"選択"についての物語だ、としていた。カルロスもセバスティアンも、自身のセクシャリティはカムアウトしていないまま亡くなっている。題名にもある"黒い玉"は拒絶の象徴、一方で"白い玉"はロルカ作品の多くで"死"を意味する雪とも結びつく。そんな時代を、二人はどのような選択でどのように生き延びたのか?その歴史を、当事者でもあるアルベルトが紐解いていくわけだ。

とはいえ、三つの挿話の交わらせ方は少し雑だったのは気になった。"選択"或いは"白と黒"というモチーフがアルベルトの挿話であまり活きていないように見えたし、ロルカの"この戯曲が将来僕らみたいな人を助けると思うんだ"という言葉をもっと活かしても良かったと思う。確かにセバスティアンは助けられていたけど、それは映画の外側にあるし、もっと直接的な関連のない不特定多数の人間を助けるような展開が見たかった。あと、観る前から気になっていたフランコ時代を省いた理由は説明されないままだった。などと色々言ってみたが、プロデューサーとして名を連ねるペドロ・アルモドバルの近作は軽々と超えていると思う。ちなみに、監督二人を含めた数名のキャストが同じコンペのアルモドバル作品『Bitter Christmas』と被っている。カンヌも世代交代待ったなしか。

追記
セバスティアン篇の舞台は沿岸部なので、ビーチではしゃぐ兵士たちの姿がよく登場する。官能性は『美しき仕事』の一歩手前くらいに留め、兵士たちの無邪気な残酷さを両立させていたのが興味深い。
M
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Milo Quifes❤️