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男はつらいよ 純情篇のbluetokyoのレビュー・感想・評価

男はつらいよ 純情篇(1971年製作の映画)
4.0
思い出した。男はつらいよは、前作、つまり、第5作の望郷編で終わる予定だったのだ。だから、望郷編は力が入っていて名作なわけだが。
実際は、終わらずにシリーズとしては、また始まる。だからといって、第6作の純情編は手を抜いているわけでもないけど。
テーマは、簡単に別れてはいけないよ、ということか。
ヒロインは、若尾文子演じる明石夕子。やっぱり、脚本は当て書きなんだろうか。それほど出演シーンもないし、重要な役柄でもないのに、存在感を見せ付けるシーンが二回ある。

寅さんは長崎から五島へ行こうとしているところである。ところがもう船は出てしまった。どっかの宿に泊まらなければならない。そのとき、赤ん坊を連れた若い女性、絹代が声をかけてくる。宿代を貸してくれということだ。
仕方がないので寅さんは、自分の泊まる宿に連れて行った。
部屋に入ると絹代は子供を寝かしつけてから、やおら背を向け、服の背のファスナーを下ろしながら、子どもがいるので電気は消してくださらない、と言うのだった。男はつらいよでは珍しい、というより唯一のエロシーンだ。ただ、続男はつらいよ(第2作)でも、母親がラブホを経営しているのだが、寅さんがマドンナ役とそのホテルを訪れるシーンも、エロい感じだったけど。
寅さんは、もちろん断るわけだ。

寅さんは、絹代に付き添って五島へ。絹代の父親の家まで付いて行ってやる。絹代がなぜこうまでして父親のもとに帰って来たのかというと、夫のギャンブル癖や何かがあって耐えられなかったのだ。
ところが、父親の千造は、夫のところへ帰れ、と言ってきかないのであった。このままここにいても、自分が亡くなれば、生活は成り立たない。夫と結婚したのも、どっかに惹かれるところがあってのことだ、と言うのだ。たしかにそうかもしれない。
寅さんも納得しかかったが、最終便の船の合図を聞くと、逆に居てもたってもいられず、柴又へ帰るのだった。

とらやでは、実は、寅さんの部屋を遠縁の女性に一時的に貸していた。
その女性は、明石夕子、遠縁といっても、おばちゃんの説明だと、血は繋がっていないようだが。
彼女は美人なのだ。そういうときに限って、寅のやろう、帰って来るんだよな、とおいちゃんたちは噂をするのだが、やっぱり、帰って来る。

自分の部屋を無断で、他人に貸されて、寅さんは、怒るわけだが、夕子が美人なので、たちまち、惚れてしまって、そんなことはどうでもよくなる。いつものパターンである。

源ちゃんはじめ、みなが、寅さんをバカにすることに、さくらは心を痛めて、寅さんに、直接、どうして、いつも、こうなの、と苦言を呈する。
寅さんにもわからないのだけど。

結局、寅さんは面食いなのだろうか。それなら、リリーと結ばれないのはなぜかと思ってしまう。おそらく、立派な人に相応しい嫁になる女性に惹かれるのだろう。えらい兄貴になりたくて、という歌詞の通りだ。

一方、さくらの旦那の博は、タコ社長の印刷工場を辞めて独立する計画を立てている。
博の退職、独立を巡って、とらやで大騒動になる。結局、博は、退職を撤回する。

寅さん、無理して、独立して、社長になったって、せいぜい、タコ止まりよ。
タコ社長、そうだよ、つれえことばっかだよ。

この騒動を見ている夕子さん。騒ぎに巻き込まれることなく、自分で受け止めてなにか期することを見い出したような感じ。

夕子さんは寅さんを江戸川土手の散歩に誘う。寅さんはデートに誘ってくれたと思い大はしゃぎ。
そうではなくて、夕子さんは寅さんにお別れを言いたかったのだ。でもたじろがない、冷静な夕子さん。
結局、寅さんの言うことを受け止めるが、別れは言い出せない。でも、別れる。若尾文子の名演技。

ちなみに、なんで、夕子さんが、とらやにいるのかというと、冒頭の絹代と同じ、亭主とケンカ別れをしてきたのだ。
結局、よりを戻すことにする。旦那は謝ったが、あんまり反省しているとも思えない。たぶん、夕子さんから折れたのだろう。

ということで、また、寅さんは旅に出る。
ただ、年末年始は、テキヤは稼ぎ時だから、どのみち、旅に出るような気もする。寅さんは、とらやでは正月は迎えないのだ。

京成金町線柴又駅。さくらが見送る。寅さんとさくらの絆の深さ、強さがとてもよく表現されている。情感のこもった素晴らしいエンディングだ。
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