こーひーシュガー

バンビのこーひーシュガーのネタバレレビュー・内容・結末

バンビ(1942年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

森のプリンスとして他の動物たちに祝福されながら生まれたバンビの成長を描いた本作。
人間によって母を殺されたバンビは森で最も長生きしている鹿の王様に育てられることになる。彼が父親かどうかは明確に言及されたわけではないが、バンビが産まれたときとバンビの子供が産まれたときのカメラワークの共通点に気づけばおそらくバンビの父親であることが推測される。
山を人間たちに侵され、狩られていく動物たちの描写はある種のホラーのような恐ろしさを感じた。この映画のテーマは自然と文明の対立ということになるだろう。
公開当時この映画は反狩猟プロパガンダ映画として物議を醸したらしい。子どもたちは"狩り"を"悪"であるとみなした。狩人たちはそのような間違った認識を招くとしてディズニーに訂正を要請した。しかし狩りを悪とみなすその思考は自然と共存を望む者としての思考ではなかったのではないかと思う。つまり、私たちの生活は衣服や食材、楽器や鞄など動物の"死"によって出来上がるもので溢れている。そのため自然との共存とは自然を支配した状態での見せかけの共存でしかないのだ。
母を人間に殺されたにもかかわらず、人間への復讐心を一切抱かないバンビ。自然(動物)=無垢という概念がここで描かれている。その無垢さが我々に罪悪感を与えてしまう。そしてその罪悪感がヴィーガンによる反肉食デモなどに見られる内的対立を生んでしまう。

「バンビ」は他のディズニー映画と違い、写実的で絵画っぽさが強調されていたと思う。
愛する鹿を守るために猟犬の群れを押しのける姿勢は「バンビ」公開から約40年後に公開された「きつねと猟犬」に継がれている。動物に愛情や友情は芽生えるのか。ディズニー映画を見ている人ならすかさずイエスと答えるに違いない。それは動物たちの感情描写を人間と同じように描いているからだ。
ディズニーはこの問いをさまざまな方法で描いてきた。それを共存という壮大なテーマとして描くことで世界を変えてきたのだろう。