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主婦マリーがしたことのleylaのレビュー・感想・評価

主婦マリーがしたこと(1988年製作の映画)
4.0
前情報なしに観たら面白かった〜。シャブロル監督だからサスペンスタッチかと思いきや、どっぷり人間ドラマでした。観終わって調べると、フランスで女性最後のギロチン処刑者の実話をベースにしているとのこと。シャブロル監督×ユペール、これまた最高。特典映像で、監督がユペ様のことを大好きな女優で彼女の演技を“ファンタスティック”と褒めてました。

↓以下、ネタバレです。












第二次大戦中、ナチ占領下のノルマンディが舞台。普通の主婦マリーは、友人のために法律で禁じられている堕胎を行う。そこから、堕胎や娼婦への部屋貸しでお金を稼ぐようになっていく。収入を得て、だんだんキレイになっていくと同時に、夫とのセックスを拒んでは年下の男と不倫を楽しむようになる。善悪もわからなくなり有頂天になる様子をユペ様がうまく演じている。夫の密告により死刑となるマリー。ラストは憑きものが落ちたように素になるユペ様の表情が素晴らしい。

時代や国、ナチス、男たちによってマリーは最悪の結果になったけど、これは実は誰にでもありそうな話。『ヴェラ・ドレイク』でもそうだったけど、普通の主婦が堕胎を悪いことだとは思わず、むしろ人助けをしている気持ちになるのも当然。女性にしかわからない連帯感が生む、落とし穴のような罪だと思う。最後にマリーがつぶやく「聖母マリア、クソ聖母」は当時の女性たちの心の叫びでもある。

夫役のフランソワ・クリュゼと娼婦役のマリー・トランティニャンもよかったし、子役の少年も可愛かった。実在の少年はその後どうなったんだろう。ユペ様の怪演に気を取られてしまうけど、けっこう切ないストーリーだと思う。
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