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Fantasmagorie(原題)
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『Fantasmagorie(原題)』に投稿された感想・評価

「顔のない眼」(1959)のエディット・スコブが主演したフランスで最初の吸血鬼映画。監督・脚本はジョルジュ・フランジュの義弟で写真家のパトリス・モリナード。幻の映画とされてきたが2015年に半世紀ぶりに公開された。「Fantasmagorie(ファンタズマゴリー)」とは「夢幻劇」の意味。

18世紀に“吸血鬼”の噂があったパリ郊外のヴァル=ドワーズ地方。現在では古い迷信は忘れ去られていた。ある日、出張仕事を依頼された男(パトリス・モリナード)が旅支度をしていた。不吉な予感に襲われた妻(エディス・スコブ)は思い留まらせようとするが無駄だった。男はハイウエイを走り田舎村に入ったところで霧に迷い古城に辿り着く。主人は紳士的な貴族で男を泊めてくれたが、実は伝説の吸血鬼だった。吸血鬼は男の妻の存在を知り探しに向かう。。。

自分の偏愛するジョルジュ・フランジュ監督を調べていて見つけた掘り出し物の一本。プラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ」(1897)をベースに現代が舞台の耽美ホラーに翻案している。

本作を“フランジュ監督の映画”と言われても違和感がないほど美学が共通していた。それもそのはずで、モリナード監督はフランジュ監督のデビュー作「獣の血」(1949)からスチルカメラマンとして参加し世界観を間近で共有してきた人物。エディット・スコブともフランジュ監督の現場で旧知の仲だった。

台詞は無く、物語の背景説明と登場人物の内面描写が女性ナレーション補足されている。しかし耽美なモノクロ映像の積み重ねによって内容は充分に伝わってくるのでサイレント方式でも良かったぐらいの印象だった。

都会と田舎を行き来するハイウエイの車窓カットが、やがて時空を超えた霊的移動として用いられるのが面白い。再公開時にフランスの映画批評誌が“ムルナウ、ドライヤーとデヴィッド・リンチのミッシングリンクを埋める傑作”と書いたのは言い得て妙。

エディット・スコブの吸血鬼映画ヒロインもファンにとっては理想的な配役で、彼女の顔を模した人形には「顔のない眼」のオマージュも感じられた。吸血鬼と化したスコブが道で少女と出会うシークエンスも印象深い。白昼の田舎なのに後姿のスコブだけが夜の気配を発していてまるで合成映像のよう。直後の池のシーンで少女が消えてしまう演出も非常に好ましかった。

スコブが白いネグリジェ姿で夜の墓場を歩くシーンは、フランスで2番目の吸血鬼映画「The Rape of the Vampire」(1968)のジャン・ローラン監督に間違いなく影響を与えていると思われる。そもそもローラン監督はフランジュ監督への敬愛を公言しているが、本作の廃れた墓場、螺旋階段の城、ネグリジェの少女はローラン監督作に欠かせない要素であり、直接的な原点は本作なのではないだろうか。

個人的には、仏伊合作「血とバラ」(1961:ロジェ・バダム監督)に次ぐレベルの耽美な吸血鬼映画に出会うことが出来てとても幸運だった。