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Dua(原題)
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『Dua(原題)』に投稿された感想・評価

[コソボ、日常に侵食していく戦争の影] 70点

Blerta Basholli長編二作目。前作『Hive』はコソボ映画で初めてアカデミー国際長編映画賞のショートリスト入りを果たした作品だった。コソボ系移民二世であるデュア・リパが宣伝したことで国外でも徐々に評判が広まっていき、コソボ映画界の躍進を象徴する作品となった。しかし、ここ数年はオスカー代表提出を見送り続けており、"ないよりあるほうがマシだろ"と重鎮イシャ・チョシャに苦言を呈されるほど不作が続いていた。今年に入ってサンダンス映画祭にVisar Morina『Shame and Money』が出品され、カンヌ映画祭には本作品が登場し、まさにコソボ映画界を代表する若手が次々と新作を発表する印象的な年となった。ちなみに、アカデミー賞が規定を変更したことで、審査員大賞を受賞した『Shame and Money』は無条件で選出されることになり、コソボ代表ではないもののコソボ映画が久々にリストに並ぶことが確定した。物語は1990年代末、コソボの首都プリシュティナで暮らす10代の少女ドゥアを主人公としている。セルビア政府による弾圧が徐々に始まり、田舎の村では家が焼かれたりアルバニア系住民が殺されたりしていたが、プリシュティナでは不穏な空気を感じる程度で実害は及んでいなかった。ドゥアの母や姉は危険な国から離れたいとする一方、ドゥアの父や兄は離れたくないとして、家族の中でも意見が割れており、ドゥアは後者だった。ある時、知り合いのレオノーラが死体で見つかる。ドゥアはその現場を偶然見かけてしまったのだった。そして、後にその現場をウロついていたとき、セルビア人の変態ジジイに尻を触られたことで、ドゥアの押さえられない怒りが爆発していく…云々。昨年は特に悲惨な子供映画を大量に見ていたわけだが、本作品もそれらと同じくらい悲惨だ。同胞に手を出すセルビア人への怒りと現状への無力感が、徐々に少女の心を侵食していくのだ。冒頭では違法クラブに潜入した同世代の少女たちが、同級生のあの子を狙っているとかキスをしたか?とか聞いている中で、ドゥアは一人だけ初潮が来ていないことを気にしている、年相応の少女だった。しかし、レオノーラの死や刻々と悪化する状況を伝えるニュースを見聞きし、自らもセルビア人から被害を受けたことで、彼女は怒りを隠さなくなる。青春の日常に少しずつ戦争の悪意が侵食していき、徐々に歪んでいくのだ。

そんなときに彼女が出会ったのが柔道だ。怒りのはけ口として身体を動かして勝敗を決めるという柔道大会のフォーマットを心の拠り所としつつ、"柔道は単純な物理的強さだけではなく、計算された動きで巨人をも倒せる"という師範の言葉は彼女の救いになった。それが当時のアルバニア系住民の共通した思いだったのかもしれない。義勇軍に参加したいという兄に対して父は"国家再建に医師や建築家が必要だ、軍に参加する以外にも貢献する手段はある"と言うが、兄はすぐにこう応える。"再建するものが残るのか?"と。その言葉を象徴するように、なんの前触れもなく柔道場は破壊され、師範も登場しなくなる。柔道に誘ってくれた親友も、そこからあっさり登場しなくなる。普段なら未熟とすら思ってしまうかもしれないが、本作品では寧ろ全てを無情に奪いさる戦争の残酷さを象徴しているように見えた(親友は単に脚本都合で登場しなくなるだけなのだが)。

監督は1983年生まれで、90年代に青春時代を迎えた世代だ。本作品にも多くの実体験や伝聞体験が盛り込まれているだろう。当時子供だった世代がカメラを持って故国に戻って当時の記憶を描く作品は増え続けている。その中でも特にEmilija Gašić『78 Days』とIva Radivojević『When the Phone Rang』は強烈だったが、本作品が描く"日常生活に徐々に戦争が侵入していく厭らしさ"はそれらに比肩する作品と言えるだろう。