櫻イミト

怪談かさねが渕の櫻イミトのレビュー・感想・評価

怪談かさねが渕(1957年製作の映画)
3.5
怪談映画の巨匠、中川信夫監督の最初の怪談映画。新東宝製作。

按摩の宗悦は借金の催促に新左衛門の家を訪ねるが、殺されて屋敷裏の累が渕に捨てられる。その晩、新左衛門は宗悦の亡霊に錯乱し妻を殺害、自身は累が渕に落ちて死亡する。 20年後、新左衛門の遺児・新吉は商家の番頭となり主人の娘お久と恋仲になる。しかしお久の三味線の師匠である豊志賀(若杉嘉津子)が横恋慕。豊志賀は実は宗悦の娘だったが互いの素性を知らず魅かれあっていく。。。

冒頭のワンシーン・ワンカット、異形と化すヒロインなど中川監督の代表作「東海道四谷怪談」(1959)のひな型のような一本(豊志賀を演じた若杉嘉津子も同作でお岩を演じている)。同作はカラーで様式美を楽しめる傑作だが、本作は親子の因果と三角関係がもつれあい物語としては長けている。揺れる水面に映る異形など映像演出も面白い。崩れた顔の半面を布で覆う姿は楳図かずおの恐怖漫画の原点と言えるだろう。

※中川監督全映画97本のうち怪談映画は8本。
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