
かつて人気バンドのギタリストとして仲間と共に夢を追っていた在日韓国人のヒロ(門間航)。しかし、親友でありバンドの中心だったギターボーカル・ソウマ(仲野温)の突然の事故死をきっかけに音楽から離れ、ダイナーの店員として空虚な日々を送っていた。 ある日、ヒロはSNSでのメッセージをきっかけに、デジタルアーティストのアオイ(永田凜)と出会う。母の再婚を機に名家の令嬢となったアオイは、新しい家庭や義父との関係に馴染めず、次第に深い孤独を抱えていく。 ヒロはアオイに誘われ、彼女が絵の題材としているチャルカ(糸紡ぎ)工房を訪れる。そこでアオイが口にした「芸術に国境はない」という言葉は、生前ソウマが語っていた「音楽に国境はない」という祈りにも似た信念と重なり、ヒロの凍てついた心を溶かしていく。 やがて心を通わせていくふたり。アオイは「レオニダスの花に囲まれて、凍死すること」が夢だと打ち明ける。彼女の切実な痛みに触れたヒロは、自分自身を取り戻すように再び音楽を紡ぎ始める。ヒロが書き上げた楽曲は動画サイトでヒットを記録し、ニューヨークで再出発するという千載一遇のチャンスが巡ってくる。ふたりは共に海を渡る決意を固めるが、平穏な時間はアオイの家族が放った一言によって打ち砕かれる。立ちはだかるのは、個人の力ではどうにもできない「国籍」という巨大な壁。 愛する人の未来か、それともふたりでイバラの道を歩むのか。 渡米を目前に、葛藤の果てにヒロが下した決断とは――。