
閉館を⽬前にした映画館。元恋⼈のアンジに呼び出されたケイは、展⽰されていた蛾の標本が⼀体、忽然と消えたことを知らされる。 5年ぶりに再会した⼆⼈は、懐中電灯を⼿に、灯りの落ちた従業員通路やロッカールームを探し始める。蛾を追ううち、かつての時間がふいに蘇り、⼆⼈の記憶と現在の境界は次第に揺らいでいく。 ⼀⽅、映画館へと続く歩道橋では、少年と少⼥が、⾃分たちが⽣まれるより昔の⾵景を⾒て「懐かしい」と呟く。館内では、⽼いた男が誰もいない隣の席に向かって語り続けている。 なぜ蛾は、太陽ではなく⼈⼯の光に集まるのか。 閉館していく映画館、失われた恋⼈との時間、経験したことのない時代への懐かしさ。そこにあるのは本当の記憶なのか、それとも⼈がつくりあげた幻想なのか。
©ツクリバ編集室