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Moulin(原題)
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『Moulin(原題)』に投稿された感想・評価

[ジャン・ムーラン、最後の闘いの記録]

2026年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。ネメシュ・ラースロー長編四作目。タイトルロールのジャン・ムーランはフランスにおける統一レジスタンス組織"全国抵抗評議会"の初代議長だった人物だ。映画は1942年の元旦にロンドンからフランスに戻ってくるシーンから始まり、次のシーンではもうバラバラの組織をまとめる会議を開いている(これが1943年5月ごろの話)ので、彼の活動そのものを描くのには興味がなさそう。その後、彼はすぐにリヨンへと旅立ち、そこで南仏方面の計画をまとめようとする。パリへの連絡員に情報を渡したり、カモフラージュとして選んだ仕事の話をクライアントの伯爵夫人としてみたり、逮捕されたメンバーの後釜を決める会議を開いてみたりと、一通りのお約束はやってくれるけど、活動自体にもそこまで興味はないようで、あっさり逮捕されてしまう。ということで、本作品の本題はクラウス・バルビーによる巧みで苛烈な尋問に置かれることになる。ジワジワと外堀を埋めていき、銃殺刑の予行演習や突然の釈放などで精神的に揺さぶりをかけ、仲間の処刑や拷問を見せ…という追い込みを丁寧に描写していく。しかし、ここにおいてもムーランの不屈の精神性には関心がないように見え、残虐な瞬間は観客に配慮しているのか全く映らないので、バルビーの厭らしさ(このとき30歳という事実が恐ろしさを倍増させる)だけが強く印象に残る。ムーランの映画なのにムーランに興味がなさすぎるという虚ろで歪な映画に見えた。LBでは二度もヴェネツィアに放出されたことでフレモーに取り入ってカンヌに返り咲くためにフランス映画を撮ったなどと散々に言われていた。どうせカンヌに戻るなら『サウルの息子』みたいな長回しの手法に敢えて回帰しても良かったと思うが、そこも日和った結果よく分からない映画が出来上がってしまった。HR誌リチャード・ローソンによる言葉で締めくくりたい。"ムーランは、自らの遅く苦しい死の過程そのもので記憶されたいと望むだろうか、それとも、命を賭して守ろうとしたもののために記憶されたいと望むだろうか?"

追記
同じくフランスのレジスタンスを描いた作品としてジャン=ピエール・メルヴィル『影の軍隊』を引用している記事もあった。未見だったが流石に比べるにも及ばないだろう…と思いつつ気になったので観てみたら、同作主演のリノ・ヴァンチュラが本作品主演のジル・ルルーシュにそっくりで驚く。真似たのかもしれない。