けーはち

スターリングラードのけーはちのレビュー・感想・評価

スターリングラード(2000年製作の映画)
3.5
スターリングラードの戦いにおいて225人のドイツ将兵を射殺したソ連の英雄的狙撃手ヴァシリ・ザイツェフ(ジュード・ロウ)の活躍を描く戦争史劇。

彼を亡き者にしようとする腕利き狙撃手ケーニッヒ少佐(エド・ハリス)との狙撃手同士の渋い決闘が主軸にあるのだが、それと共に戦争の英雄を祭り上げ士気を高める情報戦が本作のテーマでもある。というのも「ケーニッヒ少佐」なるドイツ軍将校は実在せず、ヴァシリを英雄として引き立てるためのソ連当局によるプロパガンダと言われており、英雄と喧伝された男がただの人間として生きたいと悲痛に訴える物語の中で戦う相手は、やはりプロパガンダの物語の中の人物であるという皮肉。また戦死したと思った恋人(レイチェル・ワイズ)は、実は病院にいて……っていささかに御都合よすぎるハッピーエンド。ここらはワザとかまだまだ取って付けたようなラブストーリーをぶっこむ作風がのさばっていた時代の産物か。

印象に残るのは、塹壕で兵士たちが雑魚寝しているところで声を殺して彼女とまぐわうシーン。空襲の音が腰の動きと連動していて、何か笑ってしまう。戦争の泥臭さと人間の業を感じさせてなかなか良いシーンで、悲惨ながら笑いを感じさせるのは成功なんだろう。