半兵衛

肉体の遺産の半兵衛のレビュー・感想・評価

肉体の遺産(1959年製作の映画)
4.0
この映画でのロバート・ミッチャムはアメリカ的な父親像と男性像、リーダー像を極端なまでに歪ませたような人間で地元の名士として見事に振る舞っている一方で何を判断するにも自分イズムで欲しいものは狩りでも女性でも全て追いかけ手に入れようとする。そんな家長の影響で家族は元より周囲の人まで歪んでしまうさまをミネリ監督はどっしりと受け止めて見事なドラマに仕上げている。

病的な女あさりの父親に対して醒めている母親やそうした素顔を知って距離を取る息子もさることながら、息子が惚れた女性の父親が最初は気の優しい普通の人間だったのにどんどんミッチャムの悪影響を受けていくように不幸になっていくのが不憫。そして極め付きはとんでもなく衝撃的な秘密を知らされたこと、あれは常人だったら絶対精神崩壊するって。

中盤の狩りの場面が執拗に描かれているが、それが後半のある場面で活きてくる。本来ならば普通の生活を送っていた人たちが、壊れた父性のためにマン・ハントせざるをえなくなる皮肉。

でも一番強烈なのはミッチャムの下で働くレイフの存在、序盤では単なる部下だった彼の秘密を知ったとききっとある人物に愛されなかったレイフの深い哀しみが伝わり胸が痛くなるはず。

ラストは微かな希望とそこにいる彼らは知らないが観客は知っている秘密がないまぜになり複雑な余韻が残る。
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