一人旅

ベンの一人旅のレビュー・感想・評価

ベン(1972年製作の映画)
3.0
TSUTAYA発掘良品よりレンタル。
フィル・カールソン監督作。

ネズミと病弱な少年の心の交流を描いたドラマ。

気弱で内気な陰キャ青年とネズミの交流+ネズミの大群による凶行を描いた動物パニックの佳作『ウイラード』(1971)の続編。前作の結末(主人公の青年がネズミの大群に喰い殺される)から始まる、時系列も直接的に繋がった完全な続編です。前作を鑑賞済みでない場合、冒頭の急展開に頭が混乱してしまうかもしれませんが、お話自体は全くの別物なので特に問題ありません。

前作では陰鬱なムードが全編を通して流れていましたが、続編となる本作では作風が大転換されています。心臓に持病を抱えた孤独な少年ダニーと、前作の一軒家から逃げ出したネズミのベン君の出会いと交流を中心に描いた“異種交流”映画です。優しい性格の少年は本当の友達のようにベンと接し、ベンもまた少年には敵意を示さない。少年とネズミの種族の違いを超越した友情模様がハートフルに描かれますが、近所で頻発するネズミの大群による一連の事件を捜査する警官の執念も同時並行で描かれています。少年はベンらネズミたちを守るため大人に嘘をつきますが、その間にも周辺で被害は拡大していく。やがて業を煮やした地元警察は消防をも総動員してネズミ掃討大作戦を決行。果たしてネズミの運命は――。

前作同様、本物のネズミの大群が画面を埋め尽くす映像に圧倒されます。スーパーマーケットの食品(狙いはシリアル)を根こそぎ食い尽くすシーン、女性客で賑わう健康スパに大群が侵入→客が気付いて阿鼻叫喚のシーン、さらには住処である下水道を我が物顔で占拠する無数のネズミの映像はどれもインパクト絶大です。

ネズミと少年の交流と友情+ネズミと警察の生死を賭けた闘い+少年と弟想いの姉が織りなす美しき姉弟愛を描いた動物映画。前作は“痛々しい青年だなネズミ怖いな不気味だな~”でしたが、本作は“純粋な少年だなネズミ可哀想だなそんでもってお姉ちゃん優しいな~”と、人間&ネズミ双方に“同情”させてくれる作劇であります。前作製作からたった1年で丸くなりすぎ!な続編です。

ちなみに、主題歌はマイケル・ジャクソンの「ベンのテーマ」。哀感に満ちたメロディーは誰もが一度は耳にしたことがあるはずです。そもそもこの曲がネズミ映画発だったとは知りませんでしたし、まさか少年とネズミの友情を切なく謳い上げた歌詞だったとは…。映画と名曲の意外な関係性を発見するのも映画鑑賞の醍醐味ですよね!
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