半兵衛

19 (ナインティーン)の半兵衛のレビュー・感想・評価

19 (ナインティーン)(2000年製作の映画)
4.1
フィルム特有のざらついた画質が白日夢のような映像となり、平凡な青年がアウトサイダーな人たちに捕まり強制的に行動するうちに日常を逸脱して非日常を生きることの楽しさを感じてアウトサイダーたちに共感していくというドラマにハマっていて邦画では珍しい時代も舞台も全く不明な、非日常で不思議な物語に仕上がっている。

そんな彼らの道行きはどこにでもある道路にファミレスに海辺と平凡な風景ばかりなのに、まるでここではない別の世界の映像に仕上がっていて青年同様見ている自分も非日常の世界を体験しているような気分に。

アウトロー三人組のキャラクターも絶妙で、おちょくったりふざけたりしていたかと思えば急に暴力を振るう武作品のビートたけしのような男(監督である渡辺一志が好演)、温和で物静かなんだけれど暴力行為をにこにこして見守ったりとやはり普通の生活は送っていなさそうな男、何も物も言わないし表情も出さないけれど妙な愛嬌のある男とみな暴力性と愛嬌が同居しており主人公の青年が恐れつつ感化していくのに説得力をもたせている。

本来ならば「解放」という喜ばしいことなのに何故か名残惜しいラストを見ているうちに、自分もこうした非日常に憧れていることに気づかされていくはず。でも大人になるとそんな世界に足を踏み入れるのはかなり勇気のいる行為ではあるけどね(でもギャンブルやら女やらで引っ掛かって簡単に入ることが出来るのも事実)。

終盤ある犯罪行為を犯して緊迫状態に陥った四人と、何も知らずに彼らに絡む警官(野沢那智!)とのやりとりによるサスペンスも◎。吹き替えではアル・パチーノやデ・ニーロ、ブルース・ウィリスを演じてきた野沢による三枚目演技も見事で声優だけやらすには勿体なかったなと思えた。
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